約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

 雪哉の告白とその気持ちに対する贖罪に心を奪われているうちに、身体には随分と力が入っていたようだ。話の終わりを告げる雪哉の言葉を聞くと、愛梨の身体からフッと力が抜けていった。

 はあぁ、と溜息をつく。雪哉がどうにかなる理由がわからない。キャパシティ超過でどうにかなりそうなのは、愛梨の方だ。

 雪哉が帰ると言うのだから、止める理由などない。立ち上がろうとベッドに手をつくと、ふと伸びてきた雪哉の手が愛梨の手首をぐっと掴まえた。

 え、と驚いて顔を上げる。

「愛梨、キスしてもいい?」

 目が合うと、雪哉は何でもないことのように、とんでもない提案を捻じ込んできた。

 停止しそうになった思考のアクセルを思い切り踏みつけて、フルスピードで脱出する。

「いやいやいや!? ダメに決まってるでしょ!? さっき『彼氏に浮気だって勘違いされたり、責められることしない』って言ったばかりじゃない!」

 急いで首を振って否定の言葉を並べるが、顔には再び熱が灯る。動揺すると顔が赤くなるのは体質なので、焦りや羞恥が顔に出るのはこの際仕方がない。

 だが照れる事と雪哉を受け入れる事がイコールにならない事は、きちんと明言しておかなければならない。火照った顔と涙目で、

「ユキはすぐ嘘つくの?」

 と、むっとして睨むと、雪哉が少し怯んだ。

「つかないよ」

 雪哉は『嘘はつかない』と宣言し、愛梨と目が合うと再び笑みを浮かべた。

 端正な顔立ちで微笑まれると、言質を取っても心がソワソワと落ち着かない。その予覚を裏付けるように、未だ掴まれたままだった手首に突然力が込められた。

「えっ、ちょっ、……ユキ!?」

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