サッカーボールと先輩とアタシ


いつもと変わらない練習風景。

今日はマネージャーがいる。

昨日、旬磨が伝えた防寒準備はバッチリだ。

ニットの帽子に手袋、袖はないがダウンジャンパー。

マネジャー経験があるから、ぬかりはない。

俺は、といえば昼休みくらいから一年に声を掛けられ続けていた。

皆なかわいらしくラッピングしたクッキーを片手に恥ずかしそうに、俺に言う。

「ヒロ先輩、これ受け取って下さい。」

きっと今までの俺だったら、サンキューなんて笑いながら軽い気持ちで受け取っていただろう。

でも、今は違う。

万桜に出合ったから。

万桜を好きになってから。

こんなに誰かを想い続けている。

みんなそうなのかもしれない。

すごい勇気を出して、気持ちを伝えてくれているのかも知れない。

「ごめんな、俺、好きな子からじゃないと受け取れないんだ。」

悲しそうな表情を見せるが、納得して去って行く。

胸が締め付けられた。

初めて女に罪悪感を持った。

< 141 / 239 >

この作品をシェア

pagetop