SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

◇誤解のキス

——————————————
————————————————
————————————

————朝。


「……んん、」


妙なあたたかさに目を開く。


……⁉︎


……ゆう、と……?


湧人がベッドに腰を下ろし、あたしを覗き込んでいる。

片方の手があたしの頭に触れていた。


「……ゆう……」


「ごめん。 ノックしたんだけど返事がないから、心配になって」


「……え? ……あ、」


窓から入り込む陽の光がまぶしい。

目を細めながらあたしはのろのろ上半身を起こす……


「会いたかった」


ふわり、湧人が微笑んだ。


「……?」


「だって、昨日もおとといもあんまり会えなかったから。 こんなに近くに……一緒に暮らしてるのに」


「あ〜、そういえばすれ違い。 バイトバイトでいっぱいで、朝も夜も……」


「……体は、大丈夫?」


「うん。 それは大丈夫」


「今日も、バイト?」


「うん、今日は一件だけ。 久しぶりにヒマなんだ。 終わったら学校行くつもり」


「そっか。 だったら帰り、駅前のカフェに一緒に行かない?」


「……え?」


「そこ、チョコレートケーキがおいしいんだって。 ……どうかな?」


「……あ、 ……うん、 行きたい」


「じゃあ、 約束」


また微笑み、湧人は部屋から出て行った。
< 224 / 295 >

この作品をシェア

pagetop