竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ──魔獣や動物を愛でると、心が癒やされます。いつでも、遊びにきてくださいね。この子達は、陛下がお優しいと知っているからこんなに懐いているのですよ。

 ふと、以前ミレイナと喋っていたときに言われた台詞が脳裏に甦る。もふもふが好きだと知られるのは竜王としての威厳が削がれる気がしてなんとなく周りには秘密にしている。
 けれど、ミレイナは恐らくそれに気付いていて、しかも嬉しそうだった。

「しかし、褒美に人参がほしいとは、変わったリクエストだ」

 てっきり、宝石がほしいとか、ドレスがほしいとか、そんなことを言われると思っていた。しかし、ミレイナが所望したのは魔獣の首飾りとラングール人参。どちらも予想外だ。

「ラングール人参が好きとは、まるでララのようだな」

 美味しそうにラングール人参を頬張っていたララのことが思い出されて、ジェラールは人知れず表情を緩める。そして、今日一瞬だけ見たあの光景がまた脳裏に甦った。
 ミレイナの側頭部のあたり、黄金色の髪の毛の合間から、ぴょっこりとうさぎのような耳が生えていた。

「ララが人間に変身しているとでも?」

 ジェラールは自分の頭に浮かんだおかしな考えを否定するように、首を振る。そんな馬鹿なことが、あり得る筈がない。

 けれど──。

 あの日、ゴーランにララを探させたら結果的にミレイナが見つかった。その後も何度か試したが、最終的に辿り着くのは必ずミレイナがいる場所だった。

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