竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ミレイナが日中を過ごしているジェラールの執務室には、一日一回清掃のためにメイド達が訪れるのだ。

 その日も掃除道具を持って訪れたメイド達を、ミレイナはソファーの下に隠れたまま眺めていた。

「見て。ロゼッタの蕾が咲きそうよ」

 ひとりのメイドが声を上げる。

「本当ね。そろそろ庭園も見頃になりそうよ。私、今度の休日に彼と庭園デートをする約束しているの」
「えー! 羨ましい! いいなぁ」
「第一団のロベルト様とは約束していないの? 最近いい感じじゃない?」
「え? リンダの目からもそう見える?」

 部屋の掃除をしながら、三人の若いメイド達が恋バナに盛り上がっている。
 普段は黙々と作業をしている彼女達だけど、今日はジェラールが不在にしているので、お喋りしていても誰も怒らないからだろう。

 執務室から見えるテラスにはいくつかの花壇が配置されているが、そのうちのひとつに付いた蕾がそろそろ咲きそうだ。あれが『ロゼッタの花』なのだろう。

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