竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ミレイナが足に怪我をした日も、上空に飛ぶ竜を何匹も見た。その中で一匹だけ白銀に輝く大きな竜がいた。あれがジェラールの竜化したときの姿に違いない。

「側近のラルフ様が近々舞踏会を開催するって仰っているのをレイラ様が聞いたって」
「じゃあ、いよいよジェラール陛下もお妃様を迎えられる覚悟を? 噂じゃ、なかなかご結婚なさらないのは心に決めた方がいらっしゃるからだって。夜になると秘密通路からその方を呼んでいるって噂も──」
「その話、私も聞いたわ! 本当かしら?」

 またきゃあきゃあとメイド達が盛り上がり始める。
 ミレイナは長い耳をぴこぴこと揺らす。

 うん、その話は嘘だ。

 ミレイナは既に二週間、毎日のようにジェラールと寝室を共にしているけれど、一度も女性を連れ込んでいたことはない。
 というか、秘密通路があるならさっさとその恋人が現れて出入口を教えてほしいくらいだ。
 場所さえわかれば、そこから自分が逃げるのに。

(あの人って、不思議な人なのよね……)

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