誘拐は激甘生活の始まりIv
「杏菜〜……」

「ダ、ダミアン様!抱き締められていては着替えができません!」

北山杏菜(きたやまあんな)は体に巻き付いた腕に顔を赤くする。杏菜はクラリネッタ王国の次期国王、ダミアン・スズキ・トリクシィに抱き締められていた。

「もうちょっとこのままでいさせて……」

ダミアンはまるで捨てられた子犬のような目で杏菜を見つめ、抱き締める腕に力を入れる。杏菜はネグリジェから服に着替えるのを諦め、ダミアンの腕にそっと触れる。

杏菜がダミアンの弟であるリオンに出会った頃から、ダミアンに抱き締められることが多くなった。ダミアンは杏菜を抱き締めている時、いつも不安そうな顔をしている。

「ダミアン様、私にできることがあれば仰ってください。ダミアン様には笑っていてほしいのです」

杏菜がそう言うと、「本当?何でもいいの?」とダミアンは嬉しそうに言う。そして杏菜はくるりとダミアンの方を向かされた。

「杏菜からキスしてほしいな〜」
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