❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀
―――それから、彼女はベビーカーを転がしており、病院に向かって行った。あの日の事を思い出し、なんと醜態をみせてしまい、彼を取り戻して見せる。そう思った―――。菜緒はずっとお見合いしてから、彼を手放す事をしなかった。自分は川野麻衣を選んで欲しくなかった。だけど、もう―――この世にはいない。仲直りがしたい。川野麻衣を憎むのは、当然の事だと思っていた。
『―――貴方・・・待っててね・・・』
彼女は車を運転してもらいながら、運転手の山川寿に、運転をして貰う事になり、病院に向った。
病院から、三十分程であり、山川さんに―――『―――智也を・・・』と何かを言い掛けた。
『―――菜緒さん・・・心配しなくて大丈夫ですよ・・・医者も、命に別状はないと、そう言われていたんでしょう?貴方が信じなくて・・・どうするんですか?―――。』
其の言葉に、『―――山川さん・・・』と呟くと、彼は―――安心しなさい―――そう言った。子供達は―――信じているみたいですよ―――そう笑って言った。
『優子・・・茉莉・・・彼方達―――』
彼女は小さな手を握ると、『―――そうよね・・・彼方達のパパは、強い人ね―――』と言った。
彼女はふわりと笑い、山川さんは―――安心したように見やり、まるで父親の様だった―――。
『―――良かった・・・菜緒さんが、元気になって―――。』
―――此処の所、智也さんに行くのは、自分も一緒に居たかった。
そう―――貴女の、義理の父親でもある。
―――智也・・・
信じてるから―――
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