やがて春が来るまでの、僕らの話。

【杉内side】




「ねぇ律くん……」


カフェの列に並びながら、少し恐い顔をしてる律くんに声を掛けた。


「あのね」


聞きたいことがあるのになかなか聞けないのは、律くんがまたあの顔をしているから。

俺には踏み込めない、闇を持つ顔。


さっきの話の感じからして、その闇がハナエちゃんにも関係してるってことはなんとなくわかったけど。



「さっきハナエちゃんと話してたことなんだけど」

「……」

「えっと……」



2人の間に、なにがあったの?

そう聞けばいいだけなのに、それが聞けない。


だって律くんの雰囲気が、俺の口を動かすことを躊躇わせるから。



「……7年前」

「え?」



だけど俺の口を閉ざすその代わりに、翔ちゃんは自ら話し出した。

俺が聞きたかったことの、全部を……




「死んだんだ、幼馴染が」

「、…」



列に並んでただ前を見据える律くんは、ひどく重たい顔をしている。


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