獅子に戯れる兎のように
◇◇

 ―二千十五年―

 年下の同僚から抱き締められ、刺激的なセリフが鼓膜を擽る。

『どうして視線を逸らすんですか?どうして耳を塞ぐんですか?俺は雨宮《あまみや》さんが好きです』

 こんなこと…
 今まで言われたことないよ。

 ――次の瞬間……

 彼の唇が私の唇を塞いだ。

 予期せぬ嵐のように、突然のキスは心を掻き乱す……。

 鼓動がトクンと音を鳴らし、全身が熱を帯びた。

 呼吸が苦しくなり、思わず彼を見上げる。

 ――同僚だった彼が……

 その瞬間、異性へと変化した。
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