逢いたくて・・・今~和弘side~
その夜は、律子さんと会う予定だった。律子さんは、香耶乃とは違ってモテるキャリアウーマン系で、まさか僕みたいな真面目一辺倒な男に興味を示すなんて思わなかった。

「待った?」

待ち合わせのカフェで律子さんは言った。

「いえ・・・今、来たところです。・・・今日、彼女に別れを告げて来ました」

「えっ・・・」

戸惑いの色を顔に浮かべた律子さん。そして、困ったように言った。

「あなたは、私のボーイフレンドの1人よ。それ以上でも、それ以下でもない。あなたを独占しようと思ったことなんて一度もないわ」

「そんな・・・」

「彼女に謝って、やり直してもらえば・・・?」

「・・・っ。最低だな、君は」

「これが私のやり方なの」

もう、言葉も出なかった。無言で、カフェを出た。

香耶乃・・・香耶乃・・・あの傷ついた顔が忘れられない。

いつも見せてくれた、あの笑顔。「好きだよ」と言ったときに見せてくれていた、照れたような嬉しそうな顔が目の奥に映る。戻れない・・・今更、戻れるはずなんかない。
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