乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版
第20話・ダンシング・オールナイト

【異邦人・その2】

時は流れて、10月28日のことであった。

(ドドーン!!ドドーン!!ドザーッ!!ゴロゴロドスーン!!)

場所は、宍喰浦の竹ヶ島にて…

時は、朝8時過ぎのことであった。

この日は、気圧のかたむきが原因で太平洋側を中心に大荒れの天気であった。

10メートル超の猛烈なしけが、岸壁に押し寄せる。

うんと沖合で50ノット(風速25メートル・瞬間的に35~40メートル)に相当する暴風が吹き荒れていた。

加えて、1時間に80ミリ相当の雷を伴った猛烈な雨が降りしきっていた。

朝7時50分頃に徳島県南部に大雨洪水警報・海陽町の全域に土砂災害警戒情報が発令された。

そんな中で、徳島県警による捜索が行われた。

地元の住民から『竹ヶ島で、若い女男(アベック)が岸壁から堕ちたところを見た…』と言う110番通報にもとづいて県警による捜索が行われていた。

そんな中で発見された遺留品は、ゆりこが着ていた衣服だけだった。

その後、県警による捜索は打ち切られた。

ところ変わって、和歌山・三重の県境にまたがる熊野川の河口にて…

近畿地方南部と三重県も、気圧のかたむきによって大荒れの天気であった。

和歌山県新宮市と対岸の三重県側で1時間に100ミリ前後の雷を伴った猛烈な雨が観測された。

熊野灘の沖合では、90ノット(風速45メートル・瞬間的に60~70メートルくらい)に相当する暴風が吹き荒れていた。

和歌山県南部と三重県南部にも大雨洪水警報が発令された。

加えて、暴風波浪と高潮の警報も発令された。

河口付近に10メートル前後の高波が押し寄せている。

その中で、和歌山・三重の両県警による遺体引き上げ作業が行われていた。

浮かんでいる遺体は、ゆりことドーセーしていたホストのカレであった。

河口に押し寄せる高波と上流から流れてくる川の水がぶつかるので、遺体に近づくことができない。

(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!)

この時、遠くでダムの緊急放流開始を告げるブザー音が鳴り響いた。

捜査員たちは、身の安全を確保するために引き上げ作業を打ち切った。

ゆりことドーセーしていたカレは、荒波の熊野灘に流されたあとそのまま沈んで行った。

正午過ぎであった。

正午の潮岬の天気は、南東の風・風力8・暴風雨・930ヘクトパスカル・気温20度であった。

三重県尾鷲市でも、1時間に50ミリに相当する雷を伴った非常に激しい雨が降った上に、80ノット(風速40メートル・瞬間的に55メートルくらい)に相当する暴風が吹き荒れた。

大雨洪水暴風波浪高潮警報が発令されている中であった。

ゆりこが、魚市場の構内で消防団のおっちゃんたちの手によって引き上げられた。

ゆりこが引き上げられた時、白い貝殻の形の細いストラップのブラジャーだけしか着けていなかった。

ゆりこは、ホストのカレにレイプされたあと海に突き落とされたと言うことになる。

海から引き上げられたゆりこは、棺に安置されたあとまたしてもたつろうさんの実家へ運ばれた。

ゆりこは…

今度はもうアカンやろな…

時は、夕方6時10分頃であった。

けんちゃんと一緒に旅をしていたてつろうは、再びホームシックになった。

JR尾鷲駅でけんちゃんから『甘ったれのオンドレなんかよぉメンドーみれん!!』と怒鳴られて突き放されたてつろうは、非常に激しい雨に打たれながらトボトボと歩いて実家へ向かっていた。

実家へ着いたのは、夜6時50分頃だった。

家に着いた時、大広間に消防団のおっちゃんたち40人がいて、大酒飲みながらゲラゲラわろてた。

おっちゃんたちは、今夜のプロ野球日本シリーズ・東京読売巨人軍-福岡ダイエーホークス(今はソフトバンクホークス)のテイタラクを話しながらゲラゲラわろとった。

そんな中で、てつろうがフラリと帰宅した。

てつろうは、縁側からそおーっと上がったあとおっちゃんたちがいる大広間のとなりの広間へ行った。

広間には、ゆりこが安置されている棺と祭壇が置かれていた。

てつろうが忍び足で広間に入った時であった。

突然、棺の中から叫び声が聞こえた。

「ちょっと!!開けてよ!!開けてよ!!ゆりこはまだ生きとんよ!!開けてよ!!」

(ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!)

まさか…

ゆりこ…

ゆりこ、生きとんで…

てつろうは、ひどく動揺していた。

どないしょー…

どないしたらええねんなぁ…

「開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて--------------!!」

わかったねん…

今開けるけん、ひろきまわるなよ(騒ぐなよ)!!

(トントントン…ギイー)

てつろうは、近くにあったバールとかなづちを使って棺をこじ開けた。

それと同時に、ゆりこが起きあがった。

ゆりこは、白い貝殻の形のブラジャーだけ着けた状態で起きあがったあと、棺から飛び出た。

「ゆりこ!!」
「てつろうさん…てつろうさん!!」

ブラジャーのみ着けているゆりこは、てつろうに抱きついてくすんくすんと泣きじゃくった。

「くすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
「(泣きそうな声で言う)ゆりこ…ゆりこ…愛してる…」
「ゆりこもてつろうさんのこと…愛してる…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」

てつろうは、ブラジャーだけ着けているゆりこをその場に寝かせたあと、激しいキスをした。

「愛してる…」
「ゆりこも愛してる…」
「もう一度、やり直そう…」
「うれしい…」

その時であった。

(ガラガラ…)

ゆりことてつろうの激しいラブシーンを聞いた消防団のおっちゃんたちがふすまを開けた。

「あれれ…てつろうじゃない…こななところでなんしよんで?」

その瞬間、騒ぎが広まった。

消防団のおっちゃんは、ゆりこが生き返ったとさけびながら地区中を走り回った。

てつろうは、このあと政子六郎夫婦から大目玉くろたみたいだ。
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