有 料 彼 氏
「あの、どうしてあたしに……?」
「ひと目見て、きみしかいない、そう思ったんだ」
ああ、洗脳でもされているのだろう。
あのまじないのせい。きっと。ぜったい。
「お願い、します」
利用しているとわかっていた。ひとの気持ちを、いいように。
でも、彼の表情から本心のように錯覚。
口が勝手に動いてしまって、心が追いつかない──それとは違う様子だったのだ。だから、大丈夫。あたしのせいじゃない。
あたしは言われたから、それを受けただけ。
ね、そうでしょ。
「えっと、それじゃあ……」
自分を納得させるのはいとも簡単で、端を引っ張ったらほつれる布みたい。