天使なんかじゃない!年下男子の甘い誘惑
長い指をポケットに引っ掛けながら君嶋がこちらに寄ってきた。
その純真そうな雰囲気と、黒の革ジャンはやっぱりアンバランス。
だけど大きな潤んだ瞳を含みがちに三日月にすれば、ドキっとするくらい危ない香りが纏い出す。
「先輩、俺と試合しません?」
「は?」
今なんて言った?
聞き間違えかもしれない。
「お、れ、と、試合しませんか?」
やっぱり聞き間違いではない。
こんなにヒョロヒョロした輩が、私と勝負なんてしたら大変なことになる。
「あんた…今の試合見てたんでしょう? 言っておくけど怪我するわよ」
会社でもファンの多い彼。
細身でモデルのような体型に、私の蹴りを受けたら粉々になってしまう。
社内じゃないから労災だって効かないし。
⋯⋯いや社内でも労災は無理ね。
それに10個も年下の男子にそんなことしたら、変な噂がたつじゃない。
話にならないと笑っていたら、気配なく目の前にやってきた指先に顎がすくい取られた。
純真無垢だと思っていた麗しい瞳が、挑戦的に近寄ってくる。