罰ゲームから始まる恋
第1章　罰ゲーム

いじめ

バシャリ、と水がかけられる。ぽたぽたと髪から水滴が滴り落ちた。

「あー！ごめんねえ？つい、手が滑っちゃって…、」

クスクスとおかしそうに笑う三人の女子達に梢は俯いた。

「ごみかと思って間違えちゃったあ。」

「丁度いいんじゃない？すっごくお似合いよ。」

梢はギュッと箒を持つ手に力を込める。

「そうそう。あたし達は大事な用があるから先に帰るけど代わりに掃除しておいてね？」

そのまま後片付けもせずに女子達はその場を立ち去った。梢は堪えきれずにう…、と涙を流した。





―どうして…。私が何をしたっていうの…？

ヒクッ、ヒクッと嗚咽を上げながら梢は屋上で泣いていた。
泣きたい時はいつもここで思い切っきり泣く。梢の唯一心休める場所だった。
いつからだろう。彼女達からいじめを受けるようになったのは。
私が地味だから…？目障りだったから…？私が悪いの…？
考えても答えは出せない。梢は空を見上げた。
オレンジ色の夕焼けが目に映った。こうした美しい景色を見つめると不思議と心が落ち着いた。梢は気を引き締めて笑顔を浮かべた。

「大丈夫…。私は…、まだ頑張れる…。」

自分にそう言い聞かせるようにして梢は頷いた。
そして、屋上を後にする。
屋上を出て行った梢だったが物陰からごそりと人影が動いた。
顔の上にのせていた本をどけると男は梢が出て行った方に視線を向ける。
男はブレザーの胸ポケットにしまっていた黒縁眼鏡を取り出すと、カチャリ、と音を立てて眼鏡をかけた。
< 1 / 5 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop