貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます【番外編追加しました】
 晴明の住まう宮は、後宮の入り口に近いところにある。普段なら女官や侍女の姿がある後宮も、夜はその姿が見えず静まり返っていた。しんとした暗い後宮を、紅華はぱたぱたと足早に急ぐ。


 ほどなく晴明の部屋の前にたどりつくと、紅華は少し迷ってからその扉をたたいた。

「はい」

 中から聞こえた声に、紅華はわずかに瞬いて扉を開ける。

「夜分に、失礼いたします」

「紅華殿」

 卓に座ったままで驚いたように目を瞠ったのは、晴明ではなく天明だった。机上には、まるで執務室のようにたくさんの書類が置かれている。

「どうしました? もう夜も遅いですよ」

「今日はよくお会いいたしますね。陛下は、どうなされました?」

 それを聞いて晴明のふりをやめた天明は、不安げな紅華に笑んでみせる。

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