『アイラブユー』なんて言わないよ。
「好きだよ」
今日も彼は、言ってくれた。
「ありがとう」
いつものように、わたしはお礼を言う。
しばらくわたしの顔を見つめてから聖也は、くるりと背を向けて歩き出した。
「……月が、すごく綺麗だね」
彼の背中に向かって、わたしは言葉を発する。
足を止める彼。
「……ああ」
振り向くことなく、そう頷いてくれた。
わたしは、背中を見つめる。
「月が綺麗ですね」
また足を止めて、聖也は頷いてくれた。