借物の恋【中学生日記③】
 体育祭のプログラムは、順調に過ぎて行く。いいぞ、その調子だ。早く終われ。

 次の競技は〈借り物競争〉だった。まあ、余興みたいなもんだ。
 クラスの半数しか出場しない。だから、待機組のオレは余裕をぶっこいて、出場すると聞いている奈緒の姿を目で追っていた。

パーン……
スタートの合図が鳴り、競技が始まった。

おっ、いきなり彼女の出番じゃないか。「お題」が書いてある四つ折りの紙を広げて読んでいる。

奈緒が顔を上げたかと思うと、キョロキョロとオレたちの方を見て、誰かを捜している。
奈緒と目が合った。
 キュン……胸が小さく鳴る……

えっ! 何? 
 彼女が微笑みを浮かべながら、オレに向かって一直線に走って来るではないか。

一体、お題の紙に何て書いてあるんだ。まさか「好きな男子」なんて書いてあるんじゃないだろな。

「テツローくん、お願い!」
「あ、はい……」
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