好きじゃない
火曜日の昼休み。

私は相変わらず弁当を掻き込んで、急いで歯を磨く。

「忙しいねー」

若菜が紙パックに入ったコーヒー牛乳飲みながら言う。

「案外時間ないんだよねー」

私は歯ブラシを咥えながらフゴフゴ答える。

たぶんいつも通り、大丈夫だ。
私と蓮なら大丈夫だ。

二度手間になったら面倒くさいから、一応蓮の教室を覗いてから図書室に向かうことにしてる。

後ろのドアからチラッと覗くと、すぐ手前に龍樹くんと洸くんがいた。

蓮はいない。

もう図書室向かったのかな。

「おー、蓮?」
「うん、そー」
「あいつ、部室じゃね?」
「部室?」

初めて聞いた。

「んー、図書室行ってんのかも」

私は龍樹くんの答えを勝手に無視する形で独り言を呟いて、「ありがとー」とだけ言ってその場を去った。

階段を降りればすぐ図書室だ。

早すぎるんだよ。

そう思いながら駆け下りる。

と、図書室のドアは閉まっていた。

ノブを回しても鍵が掛かってる。

あれ、すれ違いになったかな。
今、鍵借りてきてくれてんのかも。

と思いながら、私も反対の事務室の方へ向かう。

いつもの女の事務員さんがお弁当を広げて座っていた。

「蓮、来ましたー?」

私が窓口から声掛ける。

「麻木くんまだだよー、図書室ー?」

慣れた感じでこちらに向かってきた。
ボードから鍵を取ってくれた。
「はい」と手渡される。

あれ、蓮、まだか。

もしかして本当に部室いるのかな。

途中通り過ぎた美術室を思い出す。

「ありがとーございまーす」

私は一声かけて、事務室を後にした。

ゆっくり図書室に引き返す。

どうせ誰もこないことは分かってるんだけど。
一応当番だし、急がなきゃ。

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