月に魔法をかけられて
いつの間にかテーブルの上にあったお皿が片付けられ、デザートが運ばれてきた。

デザートのお皿には、チョコレートで
『Buon Compleanno』と書かれてある。

イタリア語でお誕生日おめでとうという意味だそうだ。

「本日はお誕生日おめでとうございます。本日のデザートプレートですが、りんごのシャーベットとピスタチオのアイス、手作りのカスタードプリンに、ティラミスです。ごゆっくりお楽しみください」

デザートと一緒に運ばれてきた、ハートの描かれたカプチーノが芳醇な香りを漂わせている。

私はさっそく手作りのカスタードプリンをスプーンですくって口に入れた。

「彩矢、このプリン、トロトロだよ。美味しいー」

「わっ、ほんとだ。すっごいトロトロ。美月、このティラミスも食べてみて! マジ美味しい!」

「うんうん。このティラミスもめちゃ美味しい! 彩矢、ありがとね。今日は最高の誕生日だよぉ。これで来週からまた仕事頑張れるー」

「私も美月がこんなに喜んでくれてうれしいよ!」

大好きな彩矢に、美味しい料理、たわいないおしゃべりに幸せな時間。

私にとって心から満たされた本当に最高の誕生日だった。

この時までは。
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