月に魔法をかけられて
犯人の正体
長いと思っていた年末年始のお休みも瞬く間に過ぎていき、仕事始めの朝がやって来た。

私はいつもより早起きをして着替えとお化粧を済ませると、壁にかかった時計をチラチラと確認しつつ、朝食の準備に取りかかった。

ソファー前にある大きなテレビからは、もうお正月の特番ではなく、休み前と変わらない朝の情報番組が流れている。

テレビから聞こえてくるアナウンサーの元気な声に、お休みは終わってしまったのだと改めて実感していた。


年末のあの出来事から副社長とこんな風に一緒に生活することにはなってしまったけれど、今日から会社では副社長と秘書だ。

公私混同はできないし、私の態度から変な噂が立ったりして副社長に迷惑をかけることもできない。

それになんといっても、会社の人達には一緒に生活していることを決して気づかれないように細心の注意を払わなければならない。

私はフライパンの上でプチっと割れ始めるソーセージを菜箸で動かしながら、マンションを出る時間を逆算し始めた。

品川から会社のある日本橋までは京急で約15分だ。

ここから駅まで歩く時間と、日本橋を降りてから歩く時間を含めても30分ほどあれば会社に着いてしまう。


7時半は早すぎるよね……。
7時50分くらいで大丈夫かな……。


そう思いながら、ソーセージとキャベツをはさみ終えた小さなホットドックをダイニングテーブルへ運んだ。
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