怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 御通夜の席で、母親らしき女性が泣いていた。傍らには、父親だろうか男性が、その肩を抱いていた。大きく飾られた遺影には、少女のあどけない写真が鮮やかに写っている。

 お焼香を上げて、由希はふと、閉じられている棺を見る。骨しか中に入っていないため、小窓は開いていない。

 踵を返したとき、誰かに呼ばれた気がした。振り返ると、遺影を白く輝くオーブが横切る。導かれるように、由希はオーブを追った。その先には、先程の母親と父親らしき男女がパイプ椅子に座っている。寄り添う二人に、オーブは抱きつくように旋回すると、人の形を取った。
 花華が、母親の側で笑っている。

(やっと帰れたんだね)

 由希は心の中でそう言った。花華は由希を見ると、にこりと笑んで頷いた。そして、優しい声で言った。

『光の中へ行って来るね』
(光の中ってどこ?)
『分からない。でも、とても温かいところだって。そこで、生まれ変わるのを待ちなさいって、きれいな人が言ってるの』
(そう。じゃあ、きっととても良いところね)
『うん。行ってきます』
(いってらっしゃい)

 花華は微笑むと、手を振って消えた。それはまるで、暖かい太陽の光に包まれたようだった。
 由希の頬に、一滴の涙が零れた。胸を過ぎる切なさは、不思議と春の日差しのように暖かい。









               了。






















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