怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 ジャブダルに同感して、上河内が大島に称賛するような視線を送ると、大島は恥ずかしくなったのか慌てて話題を変えた。

「私のことはもう良いですから、さあ、お茶にでもしましょう」
「あたし達はちょっと散歩してきます。由希も行こう」
「あっ、わたし昨日上河内さんと笹崎さんと同じ部屋に置いてもらったから、荷物移動させなきゃ。要ちゃん達何号室?」
「良いわよ。私が運んでおくわ。藍原さんはせっかく久しぶりにお友達に会ったんだから、いってらっしゃい」
「そうですか? じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」

 要達は大島達と別れると、門へ向って歩き出した。だが、不意にあかねが思い出したようにハッとして、要の腕を軽く引いた。

「ねえ、もしかしてバスの中でメールしてたのって由希にしてたの?」
「ううん。確認のメールを由希に送ったんだけど、返事来ないからゲームしてた」
「マジかよ」
「なんだ、そんなオチ」

 秋葉とあかねが、がっくりして肩を落とした。

「ごめんね、要ちゃん。SIMカードの入れ替えとかがあるから、ペンションに着いてから連絡しようと思ってたらメール使えなくて。電話はもう夜だったから止めておいた方が良いかと思って」

「ああ、海外と電波違うから……。まあ、それは良いのよ。でも、要、アンタはさっさと教えなさいよ。ゲームしてたで良いじゃない」

「まあ、そうなんだけどね。秘密にしといた方がわくわくするでしょ」
「別にしないわよ。要の秘密主義なんか今に始まったことじゃないもの」
「でも、一年前に比べればだいぶ話すようにはなったんじゃねえか?」

「まあ、かもね」
「だね」
「自覚はあるのね」
「そりゃ、あるさぁ」

 要は感慨深げに呟いて、由希を見据えた。

「由希のおかげだね」
「そんなことないよ。それはわたしの方だよ」

 由希は小さく首を振って、そっと要の手を握った。

「前はウジウジしてはっきり話せなかったのに、普通に喋れるようになったもん。要ちゃんと、あかねちゃんと、秋葉ちゃんのおかげだよ」
「そんなこと……」

 あかねは呟いて、由希の肩に手を置いた。

「わたしの秘密も受け入れてくれたし、要ちゃんがわたしがご両親のことを伝えたとき喜んでくれたから、わたし自分のことを受け入れようって思えたんだもん」
「由希……」

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