怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「いやぁ、あたしを含めて今時の若者ってスマホいじんないと死んじゃうじゃないっすかぁ? もうとっくに知ってるのかなって思って」
「私共は、お仕事のときはケータイやスマホを触らないんです。電波によって気が乱れますから。ねえ、先生」
「その通りだ」

 笹崎の代わりに上河内が答えて、ジャブダルが満足そうに頷いた。

「ふ~ん、そうなんですね。で、田中さん。電話は使えるってのは、確認済みなんですけど。ほら、田中さん大島さんと知り合ったのSNSだって言ってたじゃないですか。Wⅰ―Fⅰあるんですよね? パスワード教えてくれません? あたし、ネット出来ないとマジ無理で」
「それ私も知りたい」

 笹崎が食い気味に手を上げる。

「ああ……すいません。実は、僕のって小型のWⅰ―Fⅰルーターなんですよ。基本、契約者しか使えないので……」
「マジで。なにそれ」
「なんだそれは、使えないな」

 横槍を入れた笹崎とジャブダルだったが、笹崎は舌打ちまじりで呟いたのに対し、ジャブダルは声は大きかったが、特に気にした風ではなかった。思ったことをすぐに口に出してしまう人のようだ。

っていうか、仕事中なんだから必要ないんでしょと、要とあかねは心の中で皮肉ったが、田中は深々と頭を下げた。

「すみません」

 要に向き合うと頬を強張らせて笑った。

「ごめんね」
「いえいえ。あたし、自分の小型ルーター持ってるんで、大丈夫です」
「すごいわね。そんなの持ってるの?」

 大島が会話に入ってきて、びっくりしたように目を大きくした。

「でも、さっき使ったら固まっちゃって」
「へえ……」
「ごめんね。小型のWⅰ―Fⅰルーターも不安定で、ここだと固まっちゃうことが良くあるんだよ。あれも回線キャリアの使ってるから。格安SIMのスマホよりは使えるんだけどね」
「マージっすかぁ……! でも、良く我慢できましたね。そんな状態でネットやってたら、あたしだったら爆発しちゃうけど」
「僕、そこまでネットやSNSに興味ないし、待つのは得意なんだ。繋がらなくなったらその辺ぶらぶらして、また繋がったらやって……みたいな感じかな」
「すごいですね。その大らかさ、羨ましい」
「いやいや、そんなこと」

 田中は気まずそうに笑う。

「大体この時間なら繋がり易いとか、この部屋ならとかあります?」
「う~ん、そうだなぁ……。リビングが一番繋がり易いかも」
「リビングですね。了解しました」 
「準備は出来たのかしら?」

 突然高慢な声音が割って入った。振り返ると猪口が立っていた。

「ちょうど今、終わりましたよ」

 にこやかに言った上河内だったが、目の奥は笑っていない。
 微妙な雰囲気を感じ取って、要達は苦笑いした。いよいよ、交霊会が始まる。


< 34 / 102 >

この作品をシェア

pagetop