怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 由希は少しだけ胸を痛めながら、大島を視た。彼女は、まだブツブツと何かを呟いている。誰も映さず、全てを否定しているようだった。それはとても、哀れな末路のような気がした。やがて、猪口もどこかに現れるだろうと、由希はふと思った。

 そこに、花華が現れた。大島が気づいた様子はない。花華はじっと由希を見て、

『お家に帰りたいの』

 と告げた。

「もうすぐ、花華ちゃんの骨が発見されるから、そうしたら警察の人に憑いて行くと良いよ。お母さんが迎えに来てくれるから」
『うん。ありがとう、お姉ちゃん』

 花華はにこやかに笑った。そして、煙のように消えた。
 由希は、なんだか泣きそうになった。

「なんて言ってたの?」
「お家に帰りたいんだって」
「そう……」

 要は今度は優しく呟いた。そこには先程と違って、同情心が詰まっていた。

「一段落ついたら、手を合わせに行こう」
「うん。そうだね」

 由希は微笑みながら、少しだけ泣いた。

 *

「あ~! 吉原! 無事だったんですね! 感謝しなさい!」

 ペンションから出た三人の前に、胸を張りながら小うるさく現れたのは呉野だった。要は開口一番に尋ねる。

「秋葉とあかねは無事?」
「無事です。命に別状なし! 今病院に運ばれてます」
「そう、良かった」

 ほっと、要は胸を撫で下ろした。その隣で、由希も安堵の表情を浮かべた。呉野は、わざと声の調子を上げる。

「僕が来てやらなかったら、吉原はもちろん、沢松も澤田も超ピンチだったんですからね!」
「そうだぞ、要! 呉野さんにはちゃんと感謝しなさい」
「ウザッ」

 想一朗を睨みつけて、要は呉野の髪を撫でる。

「ああ、ハイハイ。ありがとう、呉野ちゃん」
「ハイは一回でよろしい!」
「ハイハイ」

 二回言った要につっこむことなく、呉野はカバンからプリントアウトされた紙を取り出した。

「これ。渡す前にお前らさっさと行っちゃうですから、渡せなかったんですけど。一応」
「何?」

 要は受け取って、由希と確認した。それは、ある男の写真だった。太目の男性で、髭が生えていた。

「十年前、ここが廃墟だったときに自殺した男性です」
「え?」

 由希は怪訝に呟いた。

「わたし、この人視てないよ。一度も」
「ええ!? あの煙の男じゃないの?」
「ううん。あの人はもっと、痩せてた」
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