思春期、夏【中学生日記】
 ヒモと格闘する先生の指。それをじっと見つめていた。結び目は、一向に緩む気配がない。
 すると先生は、おもむろに水泳キャップを脱ぎ捨てた。そして束ねていた髪から、一本のヘアピンを抜く。
 ヒモの結び目にピンが突き刺された。先端が器用に動いている。懸命な取り組みが続けられていた。

 ヘアピンを抜かれた先生の髪が、ハラリと顔に垂れ下がる。髪が視界を遮った。
 邪魔だと言わんばかりに、先生は顔を振り上げる。両手が塞がっていたため、器用に髪だけを左右に振り、顔に掛かり落ちたものを払いのけていた。

 依然としてヒモは緩まなかった。先生の表情が徐々に険しくなる。
 眉間に寄った縦ジワが、苦悶の表情を作っていた。
 一連の先生の仕草。それは否が応でも、オレ自身の何かを刺激していた。

 この状況でこんなこと、本当に考えていてはいけないのであるが……
(先生…… エロいっす……)
心の声がそう言った。

 完全受け身、なすがままのオレ。ナスがママ? じゃぁ、キュウリがパパか。そんなくだらないダジャレで、エロに傾く気持ちを払いのけていた。
 先生の胸元そして太腿…… 白くて、ふっくら柔らかなそれらを、オレはチラ見していた。海パンに隠されたオレの縮こまったモノ。それが次第に目を覚まして行く……

 申し訳ない気持ちで一杯になった。
「先生、オレ…… もう…… 」

 そう、口に出そうとした時である。結び目が、僅かに緩んだ。
 先生の厳しかった表情も、それに合わせるように穏やかに緩み、結び目が解けた。

「さあ、これで大丈夫。早く着替えていらっしゃい」

 先生へのお礼もそこそこに、オレは更衣室へと駆け出していった。
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