初恋前夜
「ねえ、向こう岸まで行ってみない?」
 僕は川面を振り返ると、いい感じの雰囲気に背中を押されるように、ゆずきに提案した。
 川幅は数メートルくらいだろう。この辺りは流れが穏やかで、浅瀬が続く。
「わー、面白そう。行こ行こ!」
 ゆずきは好奇心が旺盛だ。
 でもだからって、なんとも思ってない異性に誘われて一緒に川を渡ろうなんて言い出さない節度はあるはずだ。彼女のガードを下げられている僕には、チャンスがあると思っていいのかな。
 ひとりあれこれ考えている間に彼女はサンダルを脱いでそろえた。
「流されちゃったらまずいもんね。ここに置いとこうか」
「だね」
 僕も自分のサンダルをゆずきのサンダルの隣に並べる。
 足裏に当たるごつごつとした石の感触が気持ちいい。
 僕はジーンズの裾をめくりあげた。
 
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