そろそろきみは、蹴られてくれ。
「りょ、う……が」
「うん、もういっかい」
「……涼雅」
「うん」
「りょう、っふ、んん」
瞬間的に目を閉じた。
伏せられた長い睫毛。つぶっても、目の前から消えない。
ふあ。
くちびるどうしが離れ、橘の吐息を、やけに鮮明に知った。
「──あげちゃった」
目元をくしゃりとさせて、ふわり。
八重歯がギリギリ見えないあたりで、綺麗に笑んで。
奪っちゃった、とは言わないあたりが、橘だと思った。