それ以外の方法を僕は知らない





「…変な人」

「克真くんの方が変だよ」

「…うざい、喋んないで」

「友達にそれは失礼じゃないかなぁ…」



先程から「うざい」ばかりを連呼する彼だけど、中学時代の部活の影響でそれほど脆いメンタルを持っているわけではないので、あまり心情の読み取れない悪口は気にしないことにしている。

残念ながら、そうやって突き放そうとしても無駄なのだ。


それに、私の中で彼はもうシャイな人で通ってしまったから、それで彼を嫌いになることもない。



「よろしくね、克真くん」



そう言って手を差し出した私に彼は、一言「…うざい」と零す。

…ふふ。本当、シャイだなあ。




「うわー手冷たいね」

「…冷え性」

「私も冷え性なの。同じだね」

「おめでとう」

「え、何がおめでとう?」

「うるさい」

「なんて理不尽な…」




そっと重ねられた手の温度を、私はきっと一生忘れない。




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