身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 何も間違ってないはずなのに、これで良かったはずなのに、どうしてだろう、苦しくて悲しくて、胸がはち切れそう。

 こんなに泣いてたら、お腹の子にも影響するってわかってるのに涙が止まらない。


「佑杏……大丈夫、大丈夫だよ」


 横からお姉ちゃんが私の体を包み込んでくれる。


「私が一緒にいるから、大丈夫」


 温かい腕に、また涙が溢れ出す。

 お姉ちゃんの肩を濡らしながら、しばらくの間しがみつくようにぎゅっと抱き付いていた。


 これで全て終わった。

 あとは余計なことは考えず、お腹の子が無事に生まれてきてくれることだけを考えればいい。

 予定日まで、あと二か月。

 この子が生まれればきっと、目まぐるしい日々に余計なことは考える暇もなくなる。


「遅くなっちゃったけど、なんか買ってきてクリスマスやろっか?」


 私の様子が落ち着くと、お姉ちゃんは切り替えるようにそう提案する。


「うん、そうだね」

「佑杏は休んでて。私、近場で買い物してくるから」

「わかった」


 そういえば何時間もトイレに行ってなかったと思い、ソファを立ち上がる。

 それと同時、お姉ちゃんの腕が私の手首を掴んだ。


「佑杏、ちょっと」


 何事かと振り向いて、座っていたソファの座面に視線が奪われる。

 赤く染まった跡を見て、慌ててお尻に手をやった。


「うそ、出血……」

「佑杏、ちょっ、佑杏――」


 お姉ちゃんが私の体を受け止めてくれたのを、ふわっと遠ざかる意識の中で感じていた。

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