身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「逆に迷惑って、なんだ、そういうこと。じゃあいいじゃん、なぁ晴斗?」


 私とマスターのやり取りを冷ややかに見ていた晴斗さんは、おもむろにスツールを立ち上がった。


「俺なんかでいいんだったら、別に全然構わないけど」


 え……そうなの?


 思わぬ展開にどきんと心臓が大きく反応する。


「よーし、決まった決まった! 佑杏ちゃん、じゃあ明日は晴斗に付き合ってもらいな」

「え、あ……はい」


 本当の、本当に?そう思うと返事をする語尾が消えかけたように小さくなる。


「せっかくだから、彼氏の代わりになってもらってさ、あ! じゃあ俺からお題ってことで、明日は手繋いで観光することな?」

「へっ!?」


 マスターのとんでも提案に思わず変な声が飛び出る。


「営業中に酔っぱらってんのか?」


 冷静なツッコみをした晴斗さんは、再びピアノへと向かっていく。

 想定外の出来事とマスターの冗談めいた言葉の数々に、大きく音を立てた心臓は全身を包み込むように鳴り響いていた。

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