二択
ファイル 1 閉じ込められた孤独
あたしは、しがないただの専業主婦。

夫もしがないサラリーマン。

何の取り柄もない。


ただ毎日、掃除をして、夕食の用意をしていた。


そんなあたしがなぜ…こうような場所に閉じ込められ、監禁されているのだろうか?

もう30歳を過ぎたあたしを、誘拐する意味があるのだろうか?

確かに、若いときはそれなりにもてたけど…。



あたしの前に座る眼鏡をかけた男は、何の飾りもない机に、二枚のカードを並べると、そっと差し出した。


「木野律子さんですね」

男は、あたしに話し掛けた。

鋭い視線を向ける男は、あたしを性的対象として見ているようには思えない。

だけど、その刺すような視線は、あたしの瞳の奥の何かを探っているように感じた。

何を…?


あたしは別に、縛られているわけではなかった。

ただ四角い正方形の部屋の真ん中に置かれた机に、

男と対面する形で座らされていた。

そして、あたしの真後ろには、ドアがあった。

すぐに逃げれるわ。

他人事のように思っていたが…なぜか体がだるくって、立ち上がる気が起きなかった。

薬でも、飲まされたのかしら?

そういえば、今朝だされたごはんには、味がなかった。

あたしは思わず、視線を外し、膝の上できつく握られた両手に目を落とした。


「木野さん?」

男は、下を向いているあたしの顔を覗き込んだ。


「は、はい…」

あたしは声を震わして、顔を上げた。


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