二択

静けさの終わり

「終わりました」

「ああ…」

公園の入り口に止まっていた車の後ろに、幾多は乗り込んだ。

静かに、発車する車の中で...ハンドルを握る女がきいた。

「男性を助けなかったのですか?」

その質問に、幾多は苦笑した。

「無理だよ。警察に捕まった時点で、助からない。後は、警察の言う通りにするしかないよ」

「不当な逮捕として、訴えたらどうですか?」

「裁判になっていないのに無理だ。すべてに、罪がないとは言わないが.....今回のような件でもね。起訴されない軽犯罪のほとんどが、泣き寝入りだよ」

幾多は、煙が上がっている方を眺めていた。

「それに...あの男は、感情を選び...銃を撃った。そして、警察も感情で捕まえた。まあ〜もともと警察は感情の生き物だから、大した事でなければ見逃すこともある。だけど、不平等なのは...警察を裁く組織がない」

しばしの無言の後、女は再びきいた。

「警察は、正義でないのですか?」

幾多は即答した。

「正義が、金を貰うかね?検挙率を気にするかい?データを集める為に、逮捕するかい?例え、犯罪が起こった時に、犯人を特定しやすいとしてもね!それは、つまり....すべての民衆を疑っているということになる」

そう言った後、ため息をつき、

「捕まえる犯罪者がいないと、存在しない組織が正義とはいえないよ」

「....」

「法は正義だというが、単なる力だよ」

女は前を見つめ、

「だったら....正義はどこにあるのですか?」
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