二択

「…ですから、犯罪は減ってきてるんですよ」

テレビ番組に、コメンテーターとして呼ばれた男は、隣にいるアナウンサーではなく、テレビの向こうに言う。

「…なのに、報道によって、人々はいらぬ不安にかられ…死刑がいると、思い込まされている!」


ある学生は言う。

「社会的に、権限がないのに…死刑だけ適応するなんて…」

ある女は、言う。

「死刑とは、人類の最大の罪である」


と……。

法治国家の下、安全だというなら、警察もいらないのではないか。




「まったく、いつまでも、死刑という…野蛮な刑を発効する…この国の幼稚さ…は、いつになったら、なくなるんでしょうか」


放送後、テレビ局を出て歩く男は、コンビニの前にたむろし、地べたに座る若者に、険悪感を抱きながら、町を闊歩していた。

地下鉄で帰る為、階段を降りる男とは逆に、下から上がってくる男がいた。

紺のスーツを着た男は、階段を降りてくる男の顔を確認し、拍手した。

「素晴らしい!先生の答弁は、素晴らしい!」

拍手しながら、近づく紺のスーツの男は、ゆっくりと上がってくる。

「確かに、犯罪の数は減ってます。社会は、安全に近づいてますね」

スーツの男は、にこっと笑った。スーツの男に、殺意を感じない。

「あ、ありがとう」

少し気持ち悪いが、自分の話に賛同してくれているようだ。

男は喜んだ瞬間、

「え…」

腹部に激しい痛みを覚えた。

一気に男に近づいたスーツの男は、隠し持っていたナイフで、腹部を突き刺していた。

「減ってるんだから…1人ぐらいいいでしょ」

にこっと笑ったスーツの男は、耳元で囁いた。


「先生1人じゃ…上がりませんよ。ご心配なく」




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