はなうらない

廊下で立ち止まっていると、リビングから八橋さんがこちらを覗いた。

「正武さん、りんご食べますか?」
「え、りんご……」
「きてください」

私は猿のように林檎につられてリビングへと歩く。
八橋さんの家のキッチンは対面カウンター式で、そこに立っていた。

林檎を洗って、ペティナイフでするするとその皮を剥いていく。

素晴らしい手捌き。

「八橋さんって、前の彼女の、どういう性格が合わなかったんですか?」

その手元を見ながら尋ねる。今なら訊ける気がした。
八橋さんは林檎を八等分してお皿に乗せる。

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