贅沢な寂しさ ~身分違いの結婚
それからも 悠樹は 時々 私を食事に誘った。
いつ頃からだろう…
私が 悠樹の誘いを 待つようになったのは。
最初は ただ緊張して 上手く話せなかったのに。
いつの間にか 悠樹との時間を
私は 楽しいと思うようになっていた。
悠樹もまた 徐々に リラックスしていて。
気軽な 言葉遣いで 楽しそうに 話していた。
「前田さんって 1人暮らしなの?出身は どこ?」
「長野県の松本市です。」
「へぇ。いい所だね。」
「行ったこと ありますか?」
「うん。学生の頃 何度か スキーに行ったよ。あと 松本城とか…」
「ああ…家は もっと田舎ですけど。小学校まで 1時間近く かかるんです。」
「歩いて?」
「はい。冬とか 雨の日は キツかったなぁ。ウフッ…いい思い出ですけど。」
「俺 ずっと東京だから。そういう生活に 少し 憧れちゃうな。」
「えー。すごく不便ですよ。家の回りに 何もないし。コンビニだって 車で行くんですよ。きっと 住んだら 副社長 音を上げますよ。」
「でも 自然は たくさんあるでしょう?空気も 綺麗だし。」
「はい。それは 自慢できるかな。遠くに 山があって。水も美味しいし。あと 星が すごく綺麗です。冬の 晴れた夜は 星が降るみたいで。副社長にも 見せたいなぁ…」
つい 夢中になって 話す私を
悠樹は 優しい目で 見ていてくれた。
少し 恥ずかしくなって 私が 黙ると
「んっ?」 と問いかけるように
悠樹は 私を見つめた。
「すみません。つい 話し過ぎました。」
「ううん。前田さんの話し 聞くの すごく楽しいよ。」
悠樹が どうして そんな風に言ったのか。
私に 興味があるわけじゃない。
知らない世界の話しだから。
でも 私は 笑顔で寛ぐ 悠樹が 嬉しかった。