救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
゛ああ、私、本当はこの人を受け入れたいんだ゛

心の底でもう1人の自分が囁く。

「これであやめさんは永遠に僕のものだ」

しかし、そうこぼした光治の言葉で我に返ったあやめは、手遅れとは知りながら抱き寄せる光治の胸を押し退けようと力をこめた。

「勘違いですよ・・・」

「あやめさんは嫌ですか?」

・・・嫌ではない。

知り合ってからというもの、光治の強引さや田中の策士ぶりに振り回されながらも、グイグイと引っ張ってくれる男らしさにときめいてもいた。

だが、お互いの夢の方向性が違いすぎるのだ。

二人が寄り添って歩く未来予想図は望めない。

あやめはこれ以上、適当に誤魔化すことは難しいと判断した。

同じ時間を過ごし、手を繋いで、こんな神聖な場所でキスまでして・・・これ以上続けたら後に引けなくなる。

堅物王子の゛堅物゛という冠が取れたらただの゛イケメン王子゛が残るだけ。

こんなに一途で真面目で魅力的な男性と四六時中一緒にいて落ちない女性の方がいるなら会ってみたい。

しかし交わらない未来はお互いが不幸になるだけだ。

深みに嵌まる前に、光治に本当の気持ちを伝えておこう。

あやめはそう決心し、

「光治さん、行きたいところがあります。ついてきてくれますか?」

と、光治の手をつかんで歩きだした。

そんな二人の頭上を浮遊する小さな物体には気づかずに・・・。
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