救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
『僕の可愛い眠り姫、目覚めのキスを授けてあげよう』

ぞわり・・・。

唇に何か柔らかい感触を感じたと思ったら、何か背中がむず痒くなるような甘い言葉が聞こえてきた気がする。

気のせいだと思いたい。

しかし、次の瞬間、寝ぼけた頭で混乱しているあやめの唇に本格的なベローチューが襲ってきた・・・!

『warning (警告)!』

頭の中にハザードランプが点滅する。

目の前には壮絶な色気を撒き散らす堅物・・・否、肉食シャイニング王子。

眠れる森の美女も目覚めたときにはあやめと同じように驚いたに違いない。

そして心底思っただろう。

゛キスされたのがオヤジではなくイケメンで良かった゛と。

とはいえ、ここは個室でベッドも完備され、ことに及ぶにはおあつらえ向きな環境。

しかも、あやめが助けを呼ぼうにも周囲には王子の味方しかいないアウェイな状況。

「そんなに襲って欲しいのならご希望にお応えしてイケるところまで行ってみましょうか」

混乱するあやめに追い討ちをかけるように、堅物だったはずの王子はすっかり姿を変えてあやめに甘く囁く。

「起きます、起きますから!」

「いい子ですね。みんな待ってますよ。さあさっさと着替えて僕と一緒に行きましょう」

゛行くってどこに?゛

そんな質問も許されないまま、あやめは待ってましたとばかりに乱入してきた侍女らしき人に拉致され、あれよあれよという間に豪奢な着物に着替えさせられてしまった。

゛これって゛

゛白無垢やないかー!゛

気付いたときにはすでに遅し。

そんなあやめの叫びは、虚しくも祭り囃子に掻き消されていった。

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