浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~

もしかして今日のことを気にしているのかな?
 神崎さんは、責任感の強い人だし
俺が危ない目に遭ったから心配して……。

 「今回の件でハッキリした。お前は、バディとして
俺とやって行くには不十分だと。
 伊波とならもっと上手くやっていただろう。
お前は、まだ学生だ。自分の生活を大事にしろ」

「俺は、大丈夫です。これからもっと
 神崎さんのバディとして相応しくなるように
努力をしますし、やる気もあります。
 だからそんなことを言わないで下さい!」

 俺は、まだまだやれる。
だからそんなことを言わないでほしい……。
 しかし神崎さんは、冷たい目で俺を見る。

「悪い。お前とは、これっきりにしてくれ」

冷たい言葉なのだが、何処か悲しげに俺には聞こえた。
 それ以上言葉が出て来なかった……。
そのまま神崎さんは、バイクを走らせ行ってしまった。

 俺は、ボー然としながらその後ろ姿を見送る。
何故だろうか?俺達は、ちゃんと乗り越えてきた。
 なのにバディとして結局認めてくれなかったのだろうか?
ただのバイトだから……。

 自分の中のやるせない気持ちに胸が痛くなった。
涙が溢れて目の前が真っ暗になっていく。

 明日には、きっと元に戻っている。
きっと今日の疲れで、気がおかしくなっちゃったんだ!
 自分の中で何度もそう言い訳をする。きっとそうだ……。

 しかし翌日になり大学に寄る前にお店に向かうが
臨時休業になっていた。
 次の日もまた次の日も神崎さんの姿は、あれから見なくなった。
 元々お店を休みがちな人だったが何だか胸騒ぎがして
どうにかして会いたいと思うようになる。
そんな時だった。

 瀬戸さんからPCウォッチにメールが届いた。
『話したいことがあるんだ。今夜一緒に食事でもどう?』と……。

瀬戸さんならだ!
 そうだ。あの人なら神崎さんの自宅や情報を
知っているかもしれない。
 俺は、すぐに返事をする。俺も話があると。
そして夜にいつも行く定食屋で待ち合わせをした。
 俺が鯖の味噌煮定食を頼んでいると瀬戸さんが少し遅れて来た。
謝りながらコロッケ定食を頼んでいた。

「いや~なかなか仕事が終わらなくてさ。
 それよりも聞いたよ?先輩の店クビになったんだって?」

あっ……やっぱり情報が漏れてる。
 ということは……瀬戸さんは、神崎さんと会っているんだ!

< 82 / 115 >

この作品をシェア

pagetop