訳ありの檸檬【中学生日記】
 宿題を出した奈良という名の国語教師は、その大柄な体型から「大仏」というアダ名で呼ばれていた。

 彼の授業はモッサくて、全然耳に入って来ない。だからオレは、国語が得意なクラスの女子に、いろいろ教えてもらっていた。
 まあ、そのついでに親しくなりたいという下心もあるんだけど。
 その女子は奈緒(なお)という名のクラスメイト……

 ちょっと前、ふとしたことから奈緒に訊いたことがあった。苦手意識の克服、どうしたら国語が好きになれるかなって。
 彼女はこう言った。

「そうだな…あたしなら、ラブレター書くための勉強って思う。言葉を楽しんじゃえ! そうすれば好きになるって」
 
 オレは妙に納得した。それ以来「彼女がオレの先生」と勝手に決めてしまった。

「先生のこと、好きなんです……」

 そんなセリフを言ってみたかったのかも知れない。図書館に来るようになったのも、彼女の影響だった。

 もっと彼女に近づきたい……オレは、そればかりを考えていた。
 まったく、恋のチカラってヤツは……
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