世界が終わるとき、そこに愛はありますか

復讐

深景さんが戻ってきたのは、それから一時間以上が経ってからだった。


「遅かったね」


助手席で彼を迎えると、深景さんの視線はダッシュボードに移動した。


触る前と同じようにしまったからバレてないはず…。


「待たせて悪いな。準備できたから降りてこい」


何も言われなかったってことは、バレてない…のかな。


さっきの車内の空気のことなんて忘れたと言わんばかりの態度の深景さん。


どことなく冷たいオーラを感じる。


「…このロッジの中に、お前の母親がいる」


「……クリスマスプレゼントってそういうことね」


木造建築のボロボロのロッジ。


この中に憎き母親がいるんだ。


復讐したい相手の一人。


今日ようやく復讐できるんだ。


長い間募り続けていた憎しみが、今解き放たれるんだ。


「会いたくなければ車のなかで待っててもいいけど、どうする?」


「待ってるわけないじゃん」
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