【短編】 Sexless-Love
1/2000の不幸
 


 ……かしゃん。




 高々と青空に舞った僕の眼鏡が、落ちて砕けた。

 今月になって三本目の眼鏡だった。

 僕の銀縁眼鏡は、作られてから一週間もしないうちに。

 コンクリートがむき出しになっている高校の屋上の床に叩きつけられ。

 ぶ厚いレンズに蜘蛛の巣みたいな亀裂を走らせて、その役目を終えた。

「……!」

 レンズがダメでも、せめて。

 その、真新しいフレームだけでも救おうと反射的に手を伸ばしたとき。

 這いつくばった僕の手を、栗田 北斗(くりた ほくと)が割れた眼鏡ごと踏みつける。

「つっ! やめろ!
 離せよっ!!」

 たまらず、叫んだ僕を。

 側にいたクラスメートの吉野 晶(よしの あきら)は、ただげらげら笑いながら見ていた。

 割れたレンズが、僕の手を傷つけ、血がどくどくと流れ出したのに。

 栗田は、情け容赦なかった。

 ぐりぐりと思い切り僕の手の甲をかかとで踏みつけ、怒鳴る。

「樋口 隆也(ひぐち たかや)!
 テメーだけは、気にくわねぇんだよっ!
 運動はデキねー
 勉強はデキねー
 牛乳瓶の底みてーな、ぐるぐるメガネをかけた猿のくせに!
 なんだって、オンナにだけは、モテんだよっ!」

「……しらねーよっ!」

 そんなコトは!!

 栗田の、言いがかりに。

 足の下の手を抜いて、反撃しようと身をよじると。

 見ていた吉野が、僕の背にのしかかって来た。

「くそ、卑怯だぞ!!」

 身動きできない僕に、栗田は、せせら笑って宣言した。

「生意気なんだよ!
 樋口!!
 今日という今日は、テメーのその顔、ずたずたにしてやるからな!」

 











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