溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「これ、どうしたの?」

 いきなり魔法のように現れたかき氷に目を見開いた。

「さっき持ってきてもらった。誰かさんはまったく気がついていなかったけどな」

 どうやらわたしが花火に夢中になっているうちに、お店の人が運んできてくれたみたいだ。

 山のようなかき氷は、ゆっくり受け取らないと今にもこぼれそうだ。差し出されたお盆ごと受け取ろうとするが、普段着慣れていない浴衣の袖が邪魔でなかなかうまくできない。

「せっかく綺麗な浴衣なのに、汚したらダメだろ。俺がやってやるから」

 和也くんはわたしに差し出していたお盆を自分の膝に乗せると、サクッと音を立ててかき氷をすくい、スプーンをわたしの方へ差し出した。

「ほら、口開けろ」

「あーん」

 言われたわたしは素直に口を開ける。するとそこに和也くんがスプーンを運んでくれた。

「ん~美味しい」

 さっぱりとした甘酸っぱいイチゴのシロップと、濃厚な練乳の味がたまらない。気がつけばわたしはまた口を大きく開けて催促していた。

「わかったから、ほら」

 クスクスと笑う和也くんだったが、スプーンいっぱいのかき氷をすくってわたしの口に運んでくれる。

 けれどその量があまりにも多かったので、うまく口に入らずに口元からこぼしてしまう。

「あ……」

 氷が溶けて口元から首に向かって伝っていく。口元を拭おうと慌ててティッシュを探す。けれどわたしがティッシュを取る前に、その手を和也くんが掴んだ。

「ティッシュ………んっ」

 次の瞬間、わたしの口元についたかき氷を和也くんが舐め取っていた。そして首元から拭うように舌を這わせる。

「ん……もう、なにしてっ……ん」

 慌てて抗議したけれど、和也くんはお構いなしに続ける。やがて舐め取っていたはずの彼の唇がわたしの唇に重なった。

 それまでかき氷で冷たくなっていた唇が、急に彼の温かい唇に包まれた。そのせいかいつもよりも和也くんの唇を熱く感じてしまう。

「んっ……ふっ」

 最初こそ抵抗していたものの、大好きな人からのキスになにも考えられなくなってしまった。
 そんなわたしたちを、大輪の花火が照らしていた。

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