溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「そんな顔するなって、本当に連れて帰るぞ」

「それは……突然すぎるというか、なんというか」

 いやわたしだってやぶさかではない。しかし急すぎる。長年あれこれと妄想してきたことがいざ叶うとなると、なんだか尻込みしてしまった。

「わかったか? だから今日は帰れ。次会うときを楽しみにしてろ」

 和也くんの手が伸びてきて、わたしの前髪をかき上げるといつかのようにキスをした。小さなキスに照れながら、わたしは車を降りる。

「家に入るまで、ここから見てるから。じゃあ、またな」

「うん。あの……夢じゃないよね?」

 車から降りたら途端に不安になってしまった。夢が叶ったけれどどこかまだ信じられない。

「夢じゃない。目が覚めても、ずっと俺はお前の彼氏だ」

 にっこりと笑顔の和也くん。今まで見た中でも最高の笑顔だ。

 そんな彼に見送られて家に帰った。

 玄関を開けるとそこには、瑠衣が怒りの表情を浮かべ仁王立ちをしていた。

「あ、あの……ただいまぁ」

 恐る恐る声をかける。しかし怒った瑠衣はわたしを睨み付けた。

「〝ただいまぁ〟じゃないわよ。どんだけ心配したと思ってるの?」

「ごめんね。それと、ありがとう」

 瑠衣が和也くんに連絡をしてくれていなかったら、こんな結果にはきっとなっていないだろう。

「わたしが噂話をしたのも悪かったけど……謝罪と感謝の気持ちがあるなら、今日のこと全部わたしに話してくれるよね?」

 けっして〝嫌だ〟とは言えない雰囲気だ。

「はい。しっかりお話しさせていただきます」

 その後わたしは今日のことをすべて話すまで、瑠衣に寝かせてもらえなかった。
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