溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
しかしその健太郎さんが、病院のお金を持って浮気相手と駆け落ち。しかも出入り業者との癒着など不正が発覚し、昌美さんも精神的にまいっているようだ。

 そんな状況の家族を放っておけるわけもなく、和也くんは日々奔走している。

「わかってはいるんですけどね。頭と心がちぐはぐで」

 忙しい彼を煩わすようなことをしてはいけないと理解はしている。けれど恋しくて会いたい。

 悩むわたしに、真鍋さんは「ははは」と笑ってみせた。

「まあね、恋愛なんてそんなものよ。みんな同じようなこと考えてるわよ」

 さすが既婚者。男と女のなんたるかを悟った言葉には重みがある。

「そんなもんですかね、我慢するしかないのかなぁ」

 またため息をつきそうになる。

「あら、そうでもないわよ。我慢ばかりしていて爆発しちゃったらどうするの? そうなる前に少しくらいわがまま言っても平気。中村先生ならそれくらい笑って受け止めてくれそうだけど」

 まあたしかに、今までも散々まとわりついていたから。

「それにわがままだって男から見たら、かわいいものよ」

「そうなんですか?」

「そうそう。特にこんなに自分のことを思ってくれている彼女ならなおさらね」

 真鍋さんはにっこりと笑って励ましてくれた。

〝わがままだってかわいい〟か……。

 わたしはスマートフォンを取り出すと、和也くんにメッセージを送った。
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