私妹
 私妹
〜しまい〜

森川 和泉(もりかわ いずみ)
森川 莉菜(もりかわ りな)
宮部 珠理(みやべ じゅり)
真壁 海子(まかべ あこ)
橋本 桜透(はしもと さとう)





海子M「ここは海が近い平和な町。いつも通りの笑顔、いつも通りの友達、いつも通りの学校…。忘れないで欲しい、当たり前は当たり前ではないということを…」
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担任「じゃあ、能力検査やって行くぞ」
海子「また能力検査か…」
海子M「この学校は能力を持つ者、持たない者の2グループに分かれている。私は持つ者側だ。能力の強さ順にランク付をされている。私の学校には圧倒的Sランクの友達がいる」
和泉「おはよう!」
海子「和泉、おはよう。今日能力検査だね」
和泉「そうだね〜」
海子「何度やっても同じなのに」
和泉「海子はさ、Sランクになりたいと思う?」
海子「え…?う〜ん…便利そうだけど、大変そうだから私はBのままでいいや」
和泉「そっか」
海子M「そう、彼女がこの学校のトップ…森川和泉だ。彼女は氷の能力を使う」
和泉「まぁ、授業2つ潰れると思ったら私的には得だけどね」
海子「どうせまた和泉はSランクでしょ?」
和泉「かもね!海子、Aランクになりたいって言ってたよね」
海子「うん…和泉の友達として一応、Aランクは欲しいなって思って…」
和泉「別に私の友達とか関係ないのに」
海子「でも…」
和泉「一緒に頑張ろう!」
海子「和泉はもうSランクだよ?」
和泉「うん…でもね、生まれつきSランクだったわけじゃないんだよ?」
海子「え?」
和泉「大変な訓練をたくさんしてSランクになったの。だから、海子もなれる!一緒に頑張ろう!」
海子「別に私はさっきも言ったけどSランクになりたいわけじゃない…」
和泉「Aランクになるにしたって同じだよ!訓練すればランクは上がる!」
海子「和泉…」
海子M「彼女はすごく頼もしいし心強い!そしてもう一人、私の友達がいる」
珠理「ふぅ、間に合った」
和泉「遅刻ギリギリ」
珠理「間に合ったんだからセーフだよ」
海子M「彼女は宮部珠理。能力ランクA+、私よりも遥かに強い」
和泉「おつかれ〜」
珠理「今日能力検査か…S行ってるといいな」
和泉「そうだね〜」
珠理「あんたはもうSでしょ?」
和泉「わかんないよ?下がってるかもしれないし」
珠理「それ…怖くね?」
和泉「語彙力大丈夫?」
珠理「大丈夫だよ!」
海子M「この学校にSランクは2人しかいない。一人は和泉、もう一人は…」
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海子「やっぱすごいね…橋本さん」
珠理「あの子ってすごい珍しい名前してるよね」
海子「あぁ、桜透だっけ?」
珠理「うん、苗字みたいな名前だよね」
海子「言われてみればそうだね…」
珠理「でも可愛くない?」
海子「ありきたりじゃなくていいと思う!」
珠理「海子も中々珍しいんじゃない?」
海子「そうかな…?」
珠理「私こそありきたりだよ」
海子「でも1番のありきたりは和泉だよね」
珠理「確かに!」
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桜透「久しぶり、和泉」
和泉「久しぶり。あれから調子はどう?」
桜透「まぁまぁね」
和泉「そう。相変わらずSランクなんだね」
桜透「和泉がA+に下がらないように祈っとくわ」
和泉「安心して、下がらないから」
桜透「じゃあ、私はお先に」
和泉「うん。またね、桜透」
担任「では計測を始めます。最大限に能力を引き出して発揮してください」
和泉「はああああ!!!」
担任「すっ、ストップ!ストップして!森川!」
和泉「…え?最大限って…」
担任「学校中凍る前にやめろよ…」
和泉「まだまだ全然凍らないのに…」
担任「はい、Sランク」
和泉「先生、ランクの基準ってなんですか?」
担任「あぁ、先生がすごいと感じたらSだ」
和泉「適当なんですね」
担任「いや、計測器があってな、ランクを表してくれるんだ」
和泉「へぇ…」
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海子「どうだった?和泉」
和泉「Sランク!海子は?」
海子「Bランク…」
和泉「次だよ!次は2ヶ月後…!うん、いける!」
海子「……」
珠理「おつかれ〜」
和泉「どうだった?」
珠理「A+、変わらずだよ」
和泉「惜しいね、もう少しでSじゃん」
珠理「まぁね」
海子「……席に着こう」
和泉「うん」
担任「それじゃあ、授業始めるぞ」
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和泉「なんか外騒がしいね」
珠理「うん」
担任「様子を見てきます。みんなはそのまま…」
和泉「先生?」
担任「火事だ…」
和泉「え?」
担任「火事だ!みんな逃げろ!」
珠理「嘘でしょ!?」
海子「えっと…非常口」
珠理「こっち!和泉、先行くよ!」
和泉「うん!」
海子「置いて行っていいの!?」
珠理「どうせ和泉は残るって」
和泉「さぁてと、私の出番」
海子「どういうこと…?」
珠理「知らないの?ランク上位者は手遅れになる前に逃げ遅れた人の救助、消火活動をするの」
海子「危険じゃない!?」
珠理「全く…それがSランク」
海子「……Sランク」
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桜透「和泉!」
和泉「桜透…!」
桜透「どうする?」
和泉「私は一階から見るから三階からお願い!」
桜透「わかった!」
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和泉「とりあえず、消火っと…ん?誰かいる…!?」
玲奈「誰か…誰か助けて…」
和泉「あれは…」
玲奈「誰か…」
和泉「大丈夫!?」
玲奈「…え?」
和泉「意識をしっかり持って!」
玲奈「はい…」
和泉「鉄鋼が脚を圧迫してて身動き取れないのね…」
玲奈「……」
和泉「大丈夫、安心して」
玲奈「ありがとうございます…」
和泉M「鉄鋼を凍らせて…砕く!」
玲奈「…!?」
和泉M「よし、これでこの子の足は動くはず」
和泉「立てる…?」
玲奈「はい!ありがとうございます…でも、どうやって逃げれば」
和泉M「しまった…!?もう火がここまで回ってきてる…」
和泉「仕方ない、私に捕まって!」
玲奈「どうするんですか…?」
和泉「窓から飛び降りる!」
玲奈「え!?」
和泉「大丈夫、ここは一階と二階の間…。そこまで高さはないよ」
玲奈「どうやって…?」
和泉「私に捕まってれば大丈夫!」
玲奈「わかりました…」
和泉「よし、じゃあ行くよ…」
玲奈「……!!」
和泉「怖くない?」
玲奈「怖くないです…」
和泉「じゃあ行くよ!」
玲奈「ひぃっ…!!」
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海子「和泉!?」
和泉「この子お願い、多分擦り傷とかあると思うから」
海子「わかった!」
和泉「じゃあ私戻るね!」
海子「うん!」
珠理「診せて!」
海子「うん!」
海子M「緊急時、私たちBランクは最下位ランク…だからただ見てるだけ。でもAランクは避難道の確認、A+は怪我した人の治療…Sランクは人命救助、その場の収めとか色々やることがある…私だけが役立たず…」
桜透「この子のことお願い」
珠理「わかりました!」
桜透「じやあ、頼んだよ」
珠理「はい!」
海子M「そうして災害時の死者を最小限にしてきた…」
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和泉「他には…誰もいないっぽいね」
桜透「和泉!」
和泉「桜透…!?」
桜透「もう三階は終わった」
和泉「私も一階は終わった」
桜透「じゃあ、あとは二階だけ」
和泉「うん」
桜透「私はこっちから見る!」
和泉「わかった!」
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桜透「ほとんど消化されてるから見やすいな。…誰かいる」
花凛「う…」
桜透「誰…!?」
花凛「助けて…」
桜透「もう大丈夫!どうしたの!?」
花凛「避難しようと思ったら、お腹が痛くて動けなくて…」
桜透「お腹…?ちょっと触るね…」
花凛「……」
桜透「え…?」
花凛「すみません…」
桜透「妊娠…してる」
花凛「生きてますか…?お腹の子」
桜透「えぇ、まだ心拍を確認できる」
花凛「よかった…」
桜透「今何ヶ月?」
花凛「え?」
桜透「今、妊娠何ヶ月!?」
花凛「5ヶ月です…」
桜透「5ヶ月でこんな小さいの…?まさか、何かお腹を圧迫してない?」
花凛「バレたくなかったので…無理やりスカートを」
桜透「バカ!何してるの!?」
花凛「え…」
桜透「赤ちゃん、首絞められて状態になってるの!」
花凛「そんな…」
桜透「スカート、脱がすけどいい?」
花凛「他に履き物が…」
桜透「赤ちゃんの命とスカート、どっちが大事なの!」
花凛「赤ちゃんの…命」
桜透「脱がすね」
花凛「はい…」
桜透「よし、大きな外傷はないけど、妊婦っていうこともあるから救急車がきたら搬送してもらってね」
花凛「わかりました…」
桜透「じゃあ飛び降りるよ」
花凛「え…!?ここらかですか!?」
桜透「じゃないと逃げられないよ?」
花凛「私一人で…」
桜透「私も一緒だから大丈夫!」
花凛「……」
桜透「じゃあちょっとそのまま立ってて」
花凛「はい…」
桜透「よし、持ち上げるね」
花凛「重くないですか…?」
桜透「大丈夫、私の能力であなたの体重は1キロになったから」
花凛「1キロ!?」
桜透「余裕!」
花凛「それにしても、女の子にお姫様抱っこしてもらうの初めてです…」
桜透「嬉しい?」
花凛「緊張します…」
桜透「じゃあ行くよ!」
花凛「はい…」
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海子「橋本さん!」
桜透「この子、妊娠してる…。それとスカート履いてないからワイシャツとかタオルで隠して。そして救急車が来たら一番優先的に搬送して!」
海子「わかりました!!伝えておきます」
桜透「よろしく!」
花凛「あの…」
桜透「ん?」
花凛「お名前、聞かせてください…」
海子「知らないんですか!?」
花凛「え…」
桜透「そりゃあ、全校生徒が私の名前と顔知ってるわけないじゃない…。橋本桜透、good luck!」
花凛「橋本さん…」
海子「よかったですね」
花凛「え…」
海子「あの人、Sランクなんですよ」
花凛「え…!?じゃあ、あの橋本さん!?」
海子「はい!」
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和泉M「もう他にいないね…よし、私も避難っと…」
桜透「和泉!もう誰もいないから避難しよう」
和泉「ちょうどいいタイミングだね!」
桜透「行こう!」
和泉「うん!」
桜透「それにしても今回の火事の原因って何だったのかしら…」
和泉「わからない…。調理実習や理科の実験はしていなかったんだって」
桜透「じゃあ何で…」
和泉「もう少しで死人が出てたかもしれない…たまたま死者がゼロだったから良かったけど…」
桜透「取り返しが付かなくなるところだったね…」
和泉「ありがとうね!桜透、助かった」
桜透「Sランクだもん。人命救助は当たり前…」
和泉「うん!ありがとう!」
桜透「じゃあ、行こうか」
和泉「うん!」
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和泉M「あれからは学校が半焼したため、自宅待機ということで私たちは勉強会をしている。死者0人、負傷者30人で済んだ…」
海子「結局、火事の原因ってなんだったんだろうね…」
和泉「それ、桜透とも話してたんだけど分からなくて…」
海子「実験、調理実習…してなかったんだよね?」
和泉「うん」
海子「じゃあなんでだろう…」
和泉「人工的なもの…?」
海子「え…?」
珠理「うちの学校にそんな…人工的に火事を起こす人がいるの…」
和泉「それしか考えられない…」
珠理「そんな…」
和泉M「全員を容疑者としてみよう…まずは桜透。あの子はSランクだが物の質量や重さを操る+風能力しか使えない…Sランクとはいえ放火させることは不可能…。火の能力を使える人といえば…海子と珠理、そして私が助けた玲奈という女の子の3人だけだ…。自分を巻き込むようなことはしないと想定して玲奈ちゃんは容疑者から外す…。となると、この2人のどちらかが放火犯」
珠理「どうしたの?」
和泉「え!?」
珠理「なんか、ずっとボーッとしてるけど」
和泉「いや、なんでもないよ!放火の原因考えてて」
海子「謎だよね…」
和泉M「能力的に言ったら珠理だけど、あの程度の火災ならBランクでもできるし…頭の良い海子なら容易いものだしな…」
海子「………」
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和泉「お邪魔しました!」
海子「はーい、またね」
珠理「ばいばい!」
和泉「ねぇ、珠理」
珠理「どうしたの?」
和泉「火事のことなんだけど、私は放火だと思ってる。そして火の能力を使える人はこの学校に3人しかいない…」
珠理「私、海子、玲奈」
和泉「うん…」
珠理「疑ってるんだ」
和泉「ごめん…」
珠理「確かに、私も和泉と同じ立場だったら疑うよ…だから仕方ない」
和泉「珠理、正直に答えて…違うよね?」
珠理「……違うよ」
和泉「……」
珠理「そうだったとしても正直にそうだよなんて答えないよ」
和泉「なんで…」
珠理「いくら友達だとはいえ先生に突き出されるかもだしね。それに、拒んでも能力戦になったら勝ち目なんてない」
和泉「珠理…信じるね」
珠理「……」
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和泉「ただいま」
莉菜「お姉ちゃん、お帰り」
和泉「莉菜…」
莉菜「どうしたの?」
和泉「ううん…ただいま!」
莉菜「…?」
和泉「莉菜、お風呂入っちゃって」
莉菜「わかった」
和泉M「あの様子だと珠理は犯人じゃない…ってことは、海子…」
莉菜「お姉ちゃん、お客さん」
和泉「え?」
海子「突然ごめんね」
和泉「海子!?」
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海子「あのね、火事の件なんだけど…」
和泉「うん」
海子「あれね、犯人私なんだ」
和泉「……!?」
和泉M「予想はついてたけど、直接言われると…」
和泉「そうなんだ…」
海子「それだけ…?もっと怒ると思ったんだけど」
和泉「じゃあ聞くけど、どうしてそんなこと?」
海子「力試しだよ」
和泉「え…?」
海子「私は和泉の友達…。だから和泉に相応しい人になりたかった…。威力の高い火事を起せば私も少しは和泉に近づけると思った…。放火して死人が出れば、私も人を殺せるんだって…」
和泉「ねぇ…」
海子「ん?」
和泉「何を言ってるか全然わからない…」
海子「だから、人を殺せば、少しは能力が上がったって実感できるから!だから放火したの!」
和泉「……!?」
海子「…なにするの?」
和泉「なに言ってるか全然わからない!!あの火事で死人が出なかったから良かったけど、一人でも死んでたらどうなってたと思う!?死体処理するのは私たち!死亡報告書を書くのも私たち!なにより、死人が出たら廃校!!そんな状態でよかったって思うの!?」
海子「は…?」
和泉「それに、もし珠理が死んでたらどうするつもりだったの…?」
海子「別にいいよ。あの子は死んでも」
和泉「は…?なに言ってるの…?」
海子「私、あの子に興味ないから」
和泉「興味あるとかないとか…どういうことじゃない!」
海子「私、和泉に近づければなんでも良い…。和泉さえいてくれれば…」
和泉「なに言ってるの…?私に相応しい能力者になるためには他の人がどうなっても良いってこと…?」
海子「そう!飲み込み早いね!」
和泉「ふざけんじゃない!!」
海子「うるさい!」
和泉「…!?」
海子「私がどんな思いで毎回能力検査を受けてるかも知らずに…!」
和泉「それは…」
海子「私は能力が上がって和泉の友達と誇れるようになればなんでも良い!和泉と私以外死んだって良い!!」
和泉「学校行くよ…」
海子「嫌だ!」
和泉「嫌じゃない!学校行くよ!」
海子「離して!!」
和泉「うるさい!」
海子「…!?」
和泉「忘れないで、私はずっと友達…見放したりしない」
海子「……」
和泉「莉菜、ちょっと出てくる」
莉菜「いってらっしゃい」
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担任「こんな夜遅くにどうしたんだ?」
和泉「先生、報告が」
担任「…?」
和泉「自分でいいな」
海子「…私が放火しました」
担任「何を言って…」
海子「私が、学校に火をつけた!何度も言わせるな!」
担任「おい!なんだその口の聞き方は!?」
海子「うるせぇ!面倒ごとはSランクに押し付けている無能な無能力者に言われたくねぇよ!」
担任「海子…残念だ」
海子「勝手に残念がってろ…中学だから退学はさせられない」
担任「確かにな…」
海子「このことを他の生徒にバラしたらパワハラになるよね?」
担任「それは違うぞ」
海子「違わない!」
担任「森川、何か言ったらどうだ?」
和泉「私は口を挟みません…」
海子「……」
担任「あの場で死者が出たらどうするつもりだったんだ!」
海子「勝手に死んでれば良い…!私に関係ない!!」
担任「ふざけるな!」
海子「殴れないですよね?体罰ですもん!」
担任「……!」
海子「私には関係ない…!死んだ奴はそれだけの力しかなかった…ただそれだけです」
担任「お前…」
海子「私、帰って良いですか?」
担任「まてよ…放火は犯罪だぞ?」
海子「少年法があるので」
担任「…」
和泉「私、帰る」
担任「あ、森川…」
和泉「はい」
担任「ご苦労さん」
和泉「いえ」
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和泉「……海子、あんなに良い子だと思っていた海子が…あんなに豹変するなんて…っ。もう、誰を信じれば良いかわからないよ…」
莉菜「お姉ちゃん、いた!」
和泉「え!?」
莉菜「お姉ちゃん遅いから学校かなと思って迎えに来た!」
和泉「どうしてわかったの?」
莉菜「海子先輩がいたから」
和泉「そっか…」
莉菜「帰ろう…」
和泉「うん…」
和泉M「莉菜、何か察したのかな…?」
和泉「莉菜、心配かけてごめんね…?」
莉菜「姉妹ってそういうものじゃない?」
和泉「そうだね!」
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海子「おはよう!和泉」
和泉「……!?」
珠理「おはよう!」
海子「おはよう!珠理」
海子「ねぇ、和泉。聞いてる?」
和泉「うん」
珠理「なんか今日機嫌悪いね」
海子「どうしたんだろうね」
珠理「さぁ…」
海子「それより3ヶ月ぶりだね!」
珠理「火事からもうそんなに経つのか…」
和泉M「白々しい…でも、見放さないって決めたから」
放送「緊急地震速報です。大きな揺れに注意してください」
珠理「地震!?」
和泉「机の下に隠れて!!」
珠理「…!!」
海子「…」
クラスメイト「きゃぁぁ!」
和泉「早く!隠れて!」
クラスメイト「うん…!!」
和泉「まずいな…この状態で大地震…」
クラスメイト「治った…?」
放送「ただいま、震度7の揺れが観測されました。大津波警報を発令します」
和泉「大津波警報!?」
海子「揺れが大きいと思ったら震度7…」
和泉「津波は私にはどうしようもできない…」
珠理「とにかく、屋上に逃げよう!」
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和泉「怪我人は居ませんか!それと、逃げ遅れた人を見たなどありませんか!?」
桜透「和泉!」
和泉「桜透…」
桜透「こんなに災害が連続するなんてね…」
和泉「本当だよね…しかも震度7…」
桜透「マグニチュードは6か」
和泉「わかるの?」
桜透「うん…念力で」
和泉「すごいね…」
桜透「戦いになったら和泉のほうが強いじゃん!」
和泉「それは関係ないよ…」
桜透「とにかく、人命救助しよう!」
和泉「…待って!?」
桜透「どうしたの?」
和泉「大津波警報が発令された…多分海から近いからあと5分もしないで来ると思う…。だから今動いたら私たちも助かる保証はないよ…」
桜透「確かに…いくらSランクだからといって自然には勝てない…」
和泉「うん…それに、多分震度7だから逃げ遅れた人の死体がそこらじゅうにあると思う…そんな状態で人命救助なんてできない」
桜透「じゃあ、水が引いたら…」
和泉「うん!そうしよう」
桜透「わかった…和泉」
和泉「ん?」
桜透「死なないでね…?」
和泉「どうしたの急に?」
桜透「いや、なんでもない!」
和泉「そっか、桜透もね!」
桜透「うん!」
珠理「忘れてたけどあの二人って幼なじみなんだ」
海子「そうなの!?」
珠理「うん…昔和泉に聞いたことがある」
海子「へぇ…幼なじみね…」
和泉M「ぱっと見…20人くらい逃げ遅れてる…多分その人たちは確実に死ぬ…ごめんなさい!……!?待って…莉菜って確か今日は休校日で家にいたはず…私の家は津波が来る…!」
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莉菜「早く逃げよう!」
市民「助けて…」
莉菜「え…!?」
市民「動けないの!この木をどかして欲しいの…」
莉菜「わかりました!」
市民2「おい、なにをやっている!?」
莉菜「助けるんですよ!」
市民2「お前、津波が来るぞ!早く逃げろ!」
莉菜「え…!?でも…」
市民2「早く行け!」
莉菜「ごめんなさい…!!」
市民「…!?待って…助けっ…!?」
莉菜「津波…!?」
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和泉M「大丈夫、莉菜ならちゃんと逃げてる…避難所で会える…!」
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莉菜「よし、高台についた…」
市民2「早く登れ!」
莉菜「はい!」
市民3「大丈夫かお嬢さん」
莉菜「はい!」
市民3「よかった」
市民2「おい、あと一人入れねぇか?」
市民3「無理だ!」
市民2「なんだって…!?」
莉菜「誰か入れないんですか?」
市民2「あぁ…一人女の人が入れなくて」
莉菜「そんな……」
市民3「…すまない」
莉菜「え…!?」
市民2「ちょ、なにやってるんだ!?」
市民3「子供より女性だろ!」
市民2「なに言ってるんだ!?子供の将来だろ!」
市民3「津波が来る…早くこの子を高台から落とせ!」
莉菜「やめて…!」
市民3「ほら、落ちろ!」
莉菜「いや…」
市民2「やめろ…!」
市民3「それともお前が落ちるか…!?」
市民2「それは…」
市民3「一緒落とすぞ!」
市民2「…あぁ」
莉菜「…!?」
市民3「早く落とせ!」
莉菜「いや……!?」
市民2「早く入れ!」
市民4「はい…!」
莉菜「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
市民4「ごめんなさい…」
市民3「津波だ」
莉菜「うっ…っ……おねえ…ちゃん…」
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和泉「…!?」
桜透「みんな、しっかりつかまってバランスを崩さないように立って!!」
珠理「海子!しっかり!」
海子「大丈夫!!」
和泉「みんな、絶対に離しちゃダメだからね!?」
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市民4「あの子は…?」
市民2「かわいそうだが、流されて行った」
市民4「そんな…」
市民3「いちいち悲しんでたら前に進めないぞ?」
市民2「お前…」
市民3「じゃあお前があの子の代わりになるか!?」
市民2「もう遅いよ…」
市民3「だろ…ゴタゴタいうな…最後は一緒に落としてただろ」
市民2「……」
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和泉M「あれから3日が経った。やっとそれぞれ自由行動が取れるようになった…。もう大津波警報、地震警報共になくなった。あの平和だった町が一瞬で泥まみれになってしまった…。水も引き、明日から人命救助が行われる…」
和泉「じゃあ私一回、莉菜のところに行くね」
桜透「いってらっしゃい」
和泉「任せてごめんね」
桜透「大丈夫、安心して行ってきて」
和泉「ありがとう…」
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和泉「泥が酷すぎて…家の見分けがつかない…きっと莉菜は高台に逃げている…」
市民5「あぁ、和泉ちゃん」
和泉「おじさん!?」
市民5「無事だったか…!よかったよかった…!」
和泉「おじさんも!」
市民5「そういえば、莉菜ちゃん、高台にいたぞ」
和泉「本当!?」
市民5「あぁ、早く行ってあげなさい!」
和泉「ありがとう!おじさん!」
和泉M「ほら、やっぱり莉菜は逃げたんだ!一人で行動できたんだ…!!よかった…莉菜」
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市民3「おい…」
市民2「…!?」
市民4「和泉ちゃん…」
和泉「あ、おばさん!」
市民4「こんにちは」
和泉「こんにちは!ねぇ、おばさんここに莉菜が来たって聞いたんだけど、いる?」
市民4「……和泉ちゃん、あのね」
市民2「俺から説明する…」
和泉「……」
和泉M「察しはついた…莉菜は飲み込まれた」
市民2「すまない…。和泉ちゃん」
和泉「は…?なんですかそれ…?」
市民2「えっ…?」
和泉「ただ流されただけなら納得します…。でも、落とされたってどういうことですか!?なんで莉菜を落としたんですか!?どうしてもっと詰めなかったんですか!?」
市民2「一番窓から近かったから…」
和泉「なんなんですかそれ…じゃあ、莉菜は殺されたんじゃないんですか!!」
市民2「殺してなんぞ!」
和泉「殺してますよ!!人殺し!莉菜を返して!」
市民2「…そうだな…すまない」
和泉「すまないって…それだけで許されると思ってるんですか!?3人の大人から落とされて…」
市民4「ごめんない…私が死ねばよかったのよ…」
和泉「おばさん…」
市民4「ごめんなさい…!ごめんなさい…和泉ちゃん…っ」
和泉「許すことはできません…。でも、おばさんは悪くない…」
市民4「…!?」
和泉「最後、莉菜はどんな感じでしたか?」
市民4「落とされる瞬間、莉菜ちゃんは叫んでいたわ…」
和泉「……そうですか」
市民4「助けて、いやだ…痛い、やめてって…」
和泉「そうですか…」
市民4「ごめんなさい…」
和泉「………一ついいですか?」
市民4「えぇ、なんでも…」
和泉「莉菜はどこにいますか?」
市民4「え…?」
和泉「流された莉菜はどこにいますか?」
市民4「それは…わからないわ…ごめんなさい…」
和泉「わからない…ですか…そうですよね。津波に流されたらどこに行くかわからない…。どんな姿かも…。原形留めていないかもしれない…一部だけないかもしれない…。」
市民4「………!?」
和泉「そんな状態によく平気でしましたね…」
市民4「…ごめんなさい」
和泉「………おじいさんは?」
市民4「あそこ…」
和泉「…あの人が一番許せない」
市民4「待って!」
和泉「なんですか…?」
市民4「せめて慰謝料だけでも…」
和泉「この場合、弁護士に訴えたところで災害時の死亡は犯罪扱いされません…。それに、慰謝料を貰っても莉菜は戻ってきません…」
市民4「ごめんなさい…」
和泉「おじいさん」
市民2「和泉ちゃん!無事でよかった…」
和泉「莉菜のこと落としたって本当ですか…?」
市民2「誰がそんなこと…」
和泉「おじさんから聞きました…おじさん、おばさん、それとおじいさんで落としたって…」
市民2「仕方なかったんだよ…津波が来る直前、おばさんかま来て…」
和泉「状況は少なくとも把握してるつもりです…」
市民2「なら」
和泉「が、だからと言って無理やり莉菜を殺して良いということにはなりません…」
市民2「殺していない…!正当防衛だ」
和泉「違いますよね…?莉菜を落とさなくてもおじいさんの安全は保証されていた…」
市民2「…」
和泉「誤魔化して…」
市民2「すまないな」
和泉「そんな軽々と謝らないでください…どうせ悪いと戻っていないんですよね…?」
市民2「その通りだ」
和泉「……!?」
市民2「仕方ないだろ…!?憎むならおばさんを憎め!災害時の殺害は罪にはならない!」
和泉「あんたが死ねばよかったのに…」
市民2「なんだと…!?」
和泉「あんたが死ねばよかった!」
市民2「クソガキ!」
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桜透「莉菜ちゃんに会えた?」
和泉「桜透…」
桜透「どうしたの!?」
和泉「らしいの…だから、莉菜には会えなかった」
桜透「なにそれ…!?」
和泉「ありえないよね…」
桜透「許せない…」
和泉「莉菜はもう…死んでる」
桜透「…和泉、大丈夫?人命救助、しないほうがいいんじゃない…?」
和泉「大丈夫…」
桜透「和泉…」
和泉「ん?」
桜透「そんな状況でできないでしょ?参加しないで…邪魔」
和泉「…!?」
桜透「その代わり、莉菜ちゃんを探してきなさい…」
和泉「桜透…」
桜透「私もその人たちのこと、許せないから…私にも妹がいるから余計にね…」
和泉「ありがとう…」
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和泉M「流されたってことは、あの高台よりも山側…?」
和泉「莉菜…どこ…?死体安置所…?いや、行ってみる!」
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和泉M「莉菜らしき人はいない…やっぱり外…」
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和泉「莉菜…!莉菜…!どこ…?」
市民4「和泉ちゃん、莉菜ちゃんを見つけたわ…」
和泉「どこですか!?」
市民4「こっちよ…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
市民4「一応、確認して…」
和泉「はい…」
和泉M「…莉菜だ…泥だらけでほとんど顔はわからないけど…この髪色、服装…。莉菜だ…」
市民4「莉菜ちゃん?」
和泉「そうです…ありがとうございます…」
市民4「そう、よかった」
和泉M「よかった…?こんなにボロボロになって…頭に外傷もある…多分落とされた時の…。酷い…。手足はちゃんとある…。でも…血と泥だらけ……」
市民4「じゃあ私たちは失礼するわね…」
和泉「待って」
市民4「え…」
和泉「莉菜をこんな姿にして…何も思わないんですか?」
市民4「だから、悪かったって…」
市民3「そうそう」
市民2「あぁ…」
和泉「そんな言葉で許されません…私、あなたたちを殺さなきゃ気が済まなくなりました…」
市民3「なんだ!?和泉ちゃんの周りに黒い影が…!?」
桜透「まずい…!!」
和泉「……アアアアアアアアアア!!!」
桜透「和泉!!!堪えて!抑えて!!」
和泉「アアアアア!」
桜透「和泉の中の怨念が暴走してる…このままだと3人あっという間に死んじゃう…」
和泉「…!!」
桜透「和泉!目を覚まして!しっかりして!抑えて!能力は誰かを傷つけるために使うものじゃない!!和泉!森川和泉!」
和泉「うるさい…」
桜透「え…!?」
和泉「私に逆らう奴は皆殺し…」
桜透「きゃっ!ダメだ…全く自我を保ててない…」
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和泉「莉菜、早く帰ろう」
莉菜「うん!ねぇ、お姉ちゃん、今日のご飯は何?」
和泉「カレー!」
莉菜「やったぁ!」
和泉「莉菜は本当にカレーが好きだね!」
莉菜「うん!大好き!」
和泉「莉菜は大きくなったらなにになりたい?」
莉菜「私は…大人になりたい」
和泉「……!?」
莉菜「お姉ちゃん、どうして助けてくれなかったの…?」
和泉「莉菜…?」
莉菜「すごく痛かったんだよ…?苦しかったんだよ…?なにより怖かった…」
和泉「莉菜…」
莉菜「お姉ちゃん、助けて…」
和泉「ごめんね…莉菜…」
莉菜「……」
和泉「助けられなかった…」
莉菜「どうして…?」
和泉「私は、そこまでの力はなかった…結局私は無力…」
莉菜「…お姉ちゃん」
和泉「莉菜、お疲れ様…苦しかったよね…。もう、ゆっくり休んで…」
莉菜「……」
和泉「お疲れ様…」
莉菜「お姉ちゃん…」
和泉「大好き…」
莉菜「わたし…もっ…」
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桜透「…!?」
和泉「…莉菜」
桜透「怨念が…消えて行く…」
和泉「莉菜…」
莉菜「お姉ちゃん、大好きだよ…!」
和泉「私も…」
莉菜「許してあげて…」
和泉「莉菜はそれで良いの…?」
莉菜「嫌だけど、仕方ないよ…。ありがとう…!」
和泉「莉菜…」
莉菜「しっかり生きて。お姉ちゃん…!」
和泉「うん…うん!」

ーENDー
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