若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
手を焼いていました…と言う父の言葉を受け、お見合いはあっという間にセッティングされた。

場所はテナントビルの屋上で相手と会い、取り敢えずは話をしてみる…ということになったのだ。


けれど、俺にはこの見合いを成立させる気はなく、これまで通り、相手のことを無視してやり過ごすつもりでいた。


…でも、それが正反対になった。

出会った彼女は、俺を無視していきなりスケッチを始め、ブツブツと独り言を言いながら、夢中でデザイン画を描き始めてしまった。


(この俺が杉苔に負けたなんて、松崎に知られてたまるものか。それに何より、あの熱心さには一目置いた)


急に枯山水の庭先へ入って行ったのを見た瞬間は唖然とした。

「杉苔!」と叫んだ声にも驚いたのだが、じっと苔を見つめながら微笑み、ムズムズと欲求に耐えれない表情を見せていたのは興味深かった。


それを思い出すと、つい吹き出しそうになってしまうのだが、欲求に負けた割には、彼女は膝の上できちんと袖を重ね、岩には浅く座って、背筋を真っ直ぐ伸ばしていたのが好印象だった。


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