若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
宿敵の相手
月曜日の朝、出勤してきた俺を見つめ、松崎は、「何かございましたか?」と挨拶もせずに訊ねてきた。


「気のせいかもしれませんけれど、口がへの字になっています」


きっぱり言い放つと、こんな風に…と自分の唇を歪ませてみせ、真顔に戻って訊き直してくる。


「土曜日は大泉様とのデートだったのでしょう。なのに、その顔とはいただけませんね」


ひょっとして、早くも嫌われました?…と楽しそうな顔つきで言うものだからムッとする。
けれど、それを否定するのも難しく、俺は黙ってそっぽを向きながら椅子に座った。


「まさか、本当に?」


慌て始める彼は、先日は仲が良さそうでしたのに…とこぼし、こっそり部屋の様子を窺っていたのだな、と思える言葉を呟く。


「…別に、嫌われた訳じゃない」


その声に反論して答えた俺は、自分でも「だよな」と胸の中で確認し、こっちを見ている松崎へと視線を流した。


「…ただ、レジデンスの広場であいつと会った。
コンシェルジュに『俺が来ている』と知らされたらしいのだが、本当のところはどうか、わからない」

「えっ?『あいつ』というのは?」


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