地獄船
やがて小恋の番が終った。


鬼はつまらなさそうに欠伸をしている。


子鬼たちも興味を持っておらず、遊び始めてしまった。


その様子を怪訝に感じる。


紅白歌合戦が始まる前はみんな興味津々だったのに、この豹変ぶりは一体なんなんだろう?


「次、白~」


鬼の声に欠伸が混じる。


俺は鬼たちの様子を伺いながらステージに立った。


選んだ曲は難しい曲だった。


最初から歌えない曲を選んでおけば、外すのも自然とできる。


綾の方へ視線を向けると、綾は青い顔のままうつむいていた。


俺は大きく息を吸い込んで、歌い始めた……。
< 141 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop