地獄船
てっきりあの奇妙なダンスをさせられると思っていたので拍子抜けする。


だけど、ひょっとこになり切るなんてどうすればいいのかわからない。


そもそも、ひょっとこがどんな生き物で、どんな口調で、どんな動き方をするのか全く知らないし。


「早人……」


綾が俺の手を掴む。


「だ、大丈夫だよ綾。ひょっとこのダンスは見たことがあるか?」


そう聞くと綾は小さく頷いた。


「きっと、あんな感じで動けばいいんだ。あ、股間を突き出したりはしなくていいぞ? こう、中腰になって、なんとなく、雰囲気でさ」


説明しながらも自分でわけがわからなくなってくる。


本当に正しいのかどうかも怪しい。
< 206 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop